合格するためのテキスト選び 「宅建」 小川多聞
(住宅新報社講師) 小川多聞
はじめに
近年の宅建試験(宅地建物取引主任者資格試験)の傾向は,若干ながら難化しているといえるでしょう。
そこで,合格するためには,よいテキストを選んで学習する必要があります。
よいテキストとはどのようなテキストか。一言でいいますと,「自分に合ったテキスト」といえるでしょう。
たとえば,初心者が300ページの分量のテキストを買っても分かるはずがありません。300ページのテキストでは,覚えるべき結論だけ書いてあり,どうしてそうなるかがまったく書いてないからです。
初心者が学習する場合は,500ページを超える分量のテキストが必要です。もちろんこれは,一般的な分量についていえることで,すべてがページ数で計れるわけではありません。
ここでは,私の経験から考えた,テキストおよび問題集の選び方を提示してみましょう。
テキストの選び方
ここで「テキスト」というのは,学習するうえで,基本となる書籍を指します。問題集や参考書とは違います。
その意味でのテキストには,大きくみて3種類ほどに分けることができるでしょう。
1つは,ページ数でみると300ページ前後のものがあります。「簡易型テキスト」と呼んでおきましょう。
次に500~600ページのテキストがあります。現在では,ほとんどのテキストがこの中に含まれます。「一般型テキスト」と呼びます。最後に,1,000ページに近いテキストがあります。何でも書いてありますので「百貨店型テキスト」としておきましょう。
(1) 簡易型テキスト
最初に少し触れましたが,このテキストは「上級者用テキスト」です。もう一通りの学習が済んで,「昨年1点及ばず落ちた人」が使うべきテキストです。初心者や中級者は,使用してはいけません。
このようなテキストは,試験に出される結論のみしか書いていないので,初心者や中級者が読んでもチンプンカンプンだからです。もちろん,本試験の1~2カ月ほど前から,まとめ用のテキストとして使用するのであれば,それなりに効果を発揮します。
「超短期」とか「最短」などという名前には惑わされないようにしましょう。それは,「超短期」「最短」で合格できるのではなく,「超短期」「最短」で読めるということに過ぎません。
(2) 一般型テキスト
宅建試験が難しくなったせいか,市販されているテキストの多くが,この形となっています。
初心者,中級レベルの人(昨年2点以上の差で不合格の人)は,このテキストを選ぶべきです。代表的なものについて,若干講評してみましょう。
①『氷見敏明の楽学宅建』(住宅新報社)
昨年まで『楽学宅建』とされていたものです。このテキストも「初心者用」に分かりやすく記載されています。
「ゴロ合わせ」「イラスト」も豊富で,なかなかあきさせません。内容的にはやや情報量が足りないか? という指摘もありましたが,今年はよりパワーアップして,合格に十分な情報量となっています。
②『パーフェクト宅建』(住宅新報社)
上記は,情報量としてはやや少なめなのに対して,本テキストは,合格のための情報がすべて掲載されています。
内容的にも「ゴロ合わせ」や「イラスト」は少ないものの,決して分かりにくいものではありません。私の,一押しのテキストです。
ページ数は,前者よりは多く600ページを超えています。名称どおり「パーフェクト」なテキストといってもいいでしょう。この点で,「一般型」よりも「百貨店型」に近いといえます。
ただ,詳細な記載は,学習の進んでいない人には重すぎるでしょうから,「初心者向け」というよりは「中級者向け」といえるでしょう。『氷見敏明の楽学宅建』が初心者用,『パーフェクト宅建』は中・上級者用といっていいでしょうか。
③『らくらく宅建塾』(週刊住宅新聞社)
かなり評判のよいテキストです。特に,「ゴロ合わせ」や「イラスト」をふんだんに使用し,分かりやすさを強調しています。
数年前までは,合格のための情報量が少ないのではないかという指摘もありましたが,改訂により必要量は達成できているといえます。特に,「初心者にお勧め」といっていいでしょう。
④『出る順宅建』(東京リーガルマインド)
「権利関係」「宅建業法」「法令上の制限・税その他」の3分冊です。特に「権利関係」の評判がいいようです。内容も分かりやすく,「初心者向け」といえるでしょう。分厚いテキストを持つのが嫌いな人は,このシリーズをどうぞ。
⑤『ひとりで学べる宅建合格テキスト』(実務教育出版)
著者が私,小川多聞です。「初心者・中級者向け」のテキストで,かなり分かりやすい本です。マンガはありませんが,「ゴロ合わせ」「イラスト」も適度にあります。ぜひ使ってください。情報量は多めで,やや「百貨店型」に近いところがあります。
その他多くのテキストが出ていますが,上記のテキストを含めて,内容的には,それほど変わらないといっていいでしょう。
(3) 百貨店型テキスト
この部類のテキストは,かなり以前から,実務家向けとして存在していたものです。『宅地建物取引の知識』(住宅新報社),『宅地建物取引の実務』(週刊住宅新聞社)といったものです。
本来,実務家向けに作られたものですので,宅建試験の受験者には向きません。ただし,実際に不動産会社に勤務している人にとっては,よいテキストといえるでしょう。
上級者および実務家向けのテキストというべきでしょう。初心者の方には,1,000ページ近いテキストは向かないと思われます。
これらのテキストのうち,どのテキストを選ぶべきでしょうか。
基本的には,「一般型テキスト」の中から選ぶべきでしょう。上述のように,一般型のテキストの中身はそれほど変わるものではありません。
そうであれば,「どれでもよいのではないか」と考えられます。そのとおりで,どれでもよいのです。しかし,これでは,何のためにこまごまと述べてきたのか分からなくなります。
そこで,1つの選択の仕方を述べましょう。なるべく大きな本屋さんに行ってください。そこに「宅建」のコーナーがあるはずです。その「宅建」コーナーにあるテキストの,ある部分を読み比べてください。
たとえば,「通謀虚偽表示の効力」です。「通謀虚偽表示の無効は,善意の第三者に対抗できない」ということは,どのテキストにも出ています。問題は,その書き方です。
結論だけ書いてあるのでは,あまりよいテキストとはいえないでしょう。
なぜ,「善意の第三者に対抗できないのか」その理由がどのように書いてあるか,その書き方に納得がいくか,それを比べてください。そして,納得がいったテキストを選択しましょう。
そうすれば,そのテキストと貴方の波長が合っていたことになりますから,途中で投げ出すようなこともないでしょう。
なお,近くに大きな本屋さんのない人もいるでしょうから,その方は,上記「一般型テキスト」から選択してください。その際には,上述した,各テキストの微妙な違いを参考にしていただければと思います。
問題集の選び方
実は,テキストを選択できたら問題集も選択できたと考えていいのです。上記テキストには,必ずテキストに対応した問題集が出版されています。
たとえば,『氷見敏明の楽学宅建』には『楽学宅建過去問ドリル』がありますし,『ひとりで学べる宅建合格テキスト』には『ひとりで学べる宅建頻出問題集』といった具合です。
この場合に,注意すべきは,「過去問集」それも,「分野別」の過去問集を選んでください。
問題集には,「予想問題集」と「過去問集」の2種類があります。「予想問題集」は,予備校の講師等が今年出題されそうな問題を予想して作成するものです。
「過去問集」は,過去の本試験に出題された問題です。「予想問題集」は,作成者により玉石混交であり,あまり勧めることはできません。
これに対して,「過去問集」は,本試験問題をそのまま載せるものであり,レベルも分かり出題傾向もつかむことができます。宅建試験は「過去問に始まり過去問に終わる」とは,宅建講師のすべてが共通していうことです。過去問に勝る教材はないのです。
次に,過去問集は,「年度別過去問集」と「分野別過去問集」の2つに分けることができます。「年度別過去問集」は,過去10年程度の過去問をそのまま年度ごと(各年50問)にまとめたものです。
「分野別過去問集」は,過去に出題された過去問を分野別に編集しなおして,まとめたものです。このうち「分野別過去問集」を使用しましょう。「年度別過去問集」は,50問の分野がばらばらに構成されているので,知識を整理するのには向いていないのです。
その他
(1) 六法は必要か?
宅建用の法令集(六法という)は必要でしょうか? これは,宅建講習のときによく聞かれる質問です。以前は躊躇なく「そんなもの必要ありません。テキストに書いてあることは,すべて六法を読みくだいたものですから」といっていました。
ところが,近年の宅建試験は,ほんとに難しくなってきています。したがって,「六法を使って学習するのも1つの方法かな?」と思うようになってきました。宅建試験よりも難度の高い試験,たとえば司法書士試験などは,必ず六法を使用します。必ずしも六法を使用したほうがよいとはいいませんが,できたら使ってみてください。
(2) 判例集は必要か?
特に民法の問題は,判例から出題されることが多くなってきています。したがって,判例集があったほうがよいのではないかという質問も受けます。
これに対しては,「特に必要はないでしょう」と答えます。なぜかというと,六法を使った場合は,六法に判例が載っている場合が多くなっていますし,テキストにも代表的な判例が取り込まれているからです。
(3) その他の教材について
たとえば,「漫画でわかる宅建」といった入門書があります。法律は取っ付きにくいものですので,入門書としてはいいのではないでしょうか。ただし,これだけで受かるとは思わないこと。
また,実際の講義を収録したDVDなどもあります。講義を受けることは,時間の短縮に役立ちますので,できたら利用したほうがよいでしょう。
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