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はじめて建物区分所有法入門 3 植杉 伸介

6 先取特権

(1)先取特権

 区分所有者は、共用部分、建物の敷地もしくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権、または規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含む。)および建物に備え付けた動産の上に先取特権を有します。

 管理者または管理組合法人がその職務または業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様に先取特権が認められます。

 先取特権とは、法律に定める特殊の債権を有する者が、債務者の財産から、他の債権者に優先して弁済を受けることができる担保物権のことです。

 設定行為を要することなく、法律上当然に生じます。


 先取特権の実行は、民事執行の手続きにより、目的物の競売を申し立てることによって行われます。

 たとえば、ある区分所有者が管理費を滞納している場合、その区分所有者が有する区分所有権・共用部分の共有持分・敷地利用権・専有部分内の一定の動産を競売にかけ、その代金から優先的に管理費等の弁済を受けることができるのです。


(2)特定承継人の責任

 (1)で述べた債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができます。

 特定承継人とは、売買などによって、特定の権利義務を承継した者をいいます。特定承継人は、区分所有権という特定の権利だけを承継したのですから、本来、前の区分所有者が滞納していた管理費を支払う義務は承継しないはずです。

 しかし、管理費等の債権を保護するため、特定承継人に債務を承継させることにしたのです。


7 建物の設置または保存の瑕疵

 たとえば、マンションのベランダの手すりの取り付けが不完全だったために、手すりの一部が落下し、通行人がケガをした場合など、建物の瑕疵が原因で事故が起きた場合に、被害者に対する損害賠償義務を負うのはだれかということが問題になります。


 区分所有建物の瑕疵が原因で損害が生じた場合、その瑕疵の場所が専有部分か共用部分かで、賠償義務を負う者が違ってきます。


 損害が生じた原因箇所が、専有部分であった場合は、その専有部分の占有者または所有者が損害賠償責任を負うことになります。


 専有部分が賃貸されている場合は、占有者である賃借人が第一次的に責任を負い、占有者に落ち度がないときは、区分所有者が最終的な責任を負うという関係になります。

 専有部分が賃貸されておらず、区分所有者自身が占有している場合は、占有者兼所有者なので、その区分所有者が当然に損害賠償責任を負います。


 損害が生じた原因箇所が、共用部分であった場合は、共用部分の占有者または所有者が損害賠償責任を負います。

 原則として、共用部分は、区分所有者全員が共同で利用し、共同で所有しているので、損害賠償義務も区分所有者全員が負うことになります。


 これに対して、瑕疵の場所が専有部分か共用部分かが不明な場合、被害者としてはだれに損害賠償を請求したらよいか分からなくて困ります。

 現実問題として、区分所有建物では、瑕疵の原因箇所を正確に特定することは難しい場合が多いと思われます。


 そこで、区分所有法は、瑕疵の場所が不明な場合は、その瑕疵は共用分にあるものと推定することにしました。共用部分の瑕疵ということですから、区分所有者全員に対して損害賠償を請求できることになります。


8 区分所有権売渡請求権

(1)敷地利用権を有しない区分所有者

 専有部分を所有する者(区分所有者)は、同時に敷地利用権を有するのが原則です。区分所有権と敷地利用権を切り離すことは、原則として禁止されているからです。

 しかし、例外的に敷地利用権のない専有部分が生じることがあります。


 たとえば、敷地利用権が賃借権であったところ、区分所有者が賃料を滞納したため、土地の所有者(賃貸人)から債務不履行*21を理由として、賃貸借契約を解除されることがあります。

 この場合、区分所有者の敷地利用権だけ消滅することになります。


 この状態は、土地の不法占拠にあたります。したがって、土地の所有者から専有部分の収去(撤去)を求めることができます。


(2)売渡請求権とは

 上に述べたように、理論的には、土地の所有者は、敷地利用権を有しない区分所有者に対して、専有部分の収去を請求できます。

 しかし、区分所有建物から1つの専有部分のみを収去することは、物理的に不可能な場合が多いでしょう。仮に物理的には可能だとしても、社会的にみて適当な行為とは思えません。


 そこで、収去を請求できる者は、収去請求に代えて、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができることとされています。

 この売渡請求権が行使されると、自動的に売買契約が成立したという効果が生じます。相手方の同意は必要ありません。


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