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はじめて建物区分所有法入門10 植杉 伸介

4 民法255条の規定の適用排除

 区分所有者が死亡したけれど、相続人も特別縁故者もいない場合は、区分所有権および敷地利用権を承継する者がいなくなります。しかし、だれの所有物でもない状態で放置するわけにもいきません。

 この点の解決策は、一応民法に規定されています。すなわち、所有者のいない不動産は、国庫に帰属することになっています。

 ところが、この規定は、単独で所有する不動産だけに当てはまるもので、共有物については、別の規定があります。

 共有者の1人が死亡して相続人も特別縁故者もいない場合は、その持分は国ではなく、他の共有者に帰属するという民法第255条の規定です。


 これらの民法の規定を区分所有建物にそのまま適用すると、次のように、専有部分と敷地利用権が分離されてしまいます。


専有部分 単独所有の不動産 国に帰属

敷地利用権 共有 他の区分所有者に帰属


 そこで、区分所有建物においては、共有に関する民法第255条の規定を適用しないことにしました。

 そうすると、敷地利用権も不動産に関する権利ですから、国庫に帰属するという民法の規定が適用されることになります。つまり、専有部分と敷地利用権のどちらも国のものになるわけです。


 なお、区分所有者が死亡した場合だけでなく、区分所有者が専有部分および敷地利用権を放棄した場合にも、これと同じ扱いになります。したがって、区分所有者が専有部分および敷地利用権を放棄した場合も、両者が国に帰属することになります。


第4章 管理者

1 管理者の選任および解任

(1)管理者とは

 共用部分、敷地、附属施設の管理は、区分所有者全員が共同で行うのが原則です。これらは区分所有者全員が(準)共有するものだからです。

 しかし、共用部分等の管理のすべてを区分所有者全員で共同して行うのは、大変です。

 特に区分所有者の数が多い場合は、実際上、無理でしょう。仮に全員で共同して行うことが可能だとしても、全員で行ったのでは、かなりの手間と時間がかかってしまいます。迅速に処理すべき案件の場合には、手遅れになるかもしれません。


 そこで、管理をスムーズに行うために、特定の者に管理の権限を与えて、その者に管理を任せるという方法が認められています。その管理を任された者のことを「管理者」といいます。


 なお、管理者を選任することは、任意であることに注意してください。管理者を選任する法的義務はありません。区分所有者の人数が少ない場合は、管理者は必要ないからです。

(2)管理者の選任

 管理者の選任は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の各過半数の集会の決議によって行います。


 管理者の選任については、規約に別段の定めをすることもできます。

 具体的には、規約に直接、「○○××を管理者とする」という定めをする方法がまず考えられます。また、規約に管理者の選任方法を定め、その選任方法により管理者を選任するというパターンもあります。


 管理者の選任資格について、法的な制限はありません。区分所有者の中から管理者を選ぶケースが多いでしょうが、区分所有者以外の者を管理者としてもかまいません。

 また、自然人(生きている人間のこと)に限らず、法人を管理者とすることもできます。したがって、マンション管理会社を管理者にすることもできるわけです。


 管理者の任期や人数についても、法的な制限はありません。規約または集会の決議によって、任期を自由に定めることができます。また、複数の管理者を定めることも可能です。

(3)管理者の解任

 管理者の解任も、規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の各過半数の集会の決議によって行います。


 もちろん、規約に別段の定めがある場合は、集会の決議によって管理者を解任することはできません。

 前述のように規約に直接、「○○××を管理者とする」という定めをしている場合は、この規約を変更しない限り、解任することができません。

 また、規約に管理者の解任方法が定めてあれば、その方法によって解任します。


 以上のほか、管理者に不正行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、管理者の解任を裁判所に請求することができます。

 管理者に不正行為等があっても、管理者がいわゆる多数派に属するため、集会の解任決議等が成立しないことがあるからです。

(4)解任以外の管理者の終任

 さらに、管理者は、任期の満了をもって退任しますし、いつでも辞任することもできます。

 ただし、管理者が区分所有者にとって不利な時期に辞任した場合は、原則として、その損害を賠償する必要があります(やむを得ない事由により辞任した場合は、損害賠償は不要)。


 また、管理者が、死亡、破産、後見開始の審判を受けた場合にも、委任契約が自動的に終了します。

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