はじめて建物区分所有法入門11 植杉 伸介
2 管理者の職務権限
(1)共用部分等の管理
共用部分、敷地、附属施設の保存行為は、管理者の権利であり、義務でもあります。
管理者は、独自の判断で共用部分等を保存することができます。
保存行為を超えて、共用部分等に対して狭義の管理・軽微変更を行う場合や、重大変更を行う場合は、それぞれの行為について必要とされている集会の決議に基づかなければなりません。
狭義の管理・軽微変更であれば区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議(普通決議)、重大変更であれば区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議です。
もっとも、重大変更以外の行為については、規約で定めれば、集会の普通決議によらず、管理者の決定に委ねることも可能です。
(2)集会の決議または規約で定めた行為の実行
管理者は、共用部分、敷地、附属施設の管理に関する集会の決議および規約で定めた行為を実行する権利を有し、義務を負います。
たとえば、共用部分の清掃のために人を雇うことが集会の決議で決まったのなら、管理者が、雇う相手を決定して雇用契約を締結するわけです。
(3)保険金等の請求および受領
共用部分等に損害保険をかけた場合、その保険契約の効果は各区分所有者に帰属します。したがって、保険金の請求および受領の権限も各区分所有者が有します。
そうすると、管理者が、保険金の請求および受領をまとめて行うためには、区分所有者全員から権限の授与を受けなければなりません。
しかし、これでは不便なので、区分所有法は、管理者に、区分所有者全員を代理して、保険金を請求し、受領する権限を与えることにしました。
管理者は、保険事故が起きた場合、区分所有者全員を代理して保険金を請求し、一括して受領することができます。
また、共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求・受領についても、損害保険金と同様、管理者に対して区分所有者を代理する権限が付与されています。
共用部分等について生じた損害賠償金とは、第三者や区分所有者の一人が、共用部分等を毀損した場合などに生じる損害賠償金のことです。
また、不当利得による返還金とは、第三者や区分所有者の一人が、共用部分等を不法占拠したり、無権限使用した場合に、その不法占拠者等に対して、本来賃料を支払って使用すべきなのだから、賃料相当額を不当に利得したとして請求する金銭のことです。
(4)訴訟追行権
滞納管理費を徴収する必要性や、管理会社等の第三者とのトラブルなどから、訴訟になることがあります。
このような場合に、区分所有者全員が原告または被告となって訴訟を追行するのは面倒です。
そこで、区分所有法は、管理者は、規約または集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができるとしています。
なお、この訴訟追行権は、管理者に選任されることによって当然に生じるものではないことに注意してください。規約に「管理者に訴訟追行権を授与する」旨の定めをするか、案件ごとに集会の普通決議で訴訟追行権を授与する必要があります。
規約の定めによって管理者に訴訟追行権が与えられている場合に、現実に訴えが提起されて、管理者が原告または被告となったときは、遅滞なく、その旨を各区分所有者に通知しなければなりません。
いつどのような訴訟が行われているかを区分所有者に知らせて、適切な訴訟追行が行われているかどうかをチェックできるようにするためです。
なお、集会の決議で管理者に訴訟追行権が与えられた場合は、この通知の義務はないことに注意してください。この場合は、個別の案件ごとに決議するので、区分所有者は訴訟の内容を知っているからです。
(5)集会の招集
管理組合の集会の招集は、管理者が行います。管理者は、必要に応じていつでも集会を招集できます。
管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければなりません。集会の招集をするかどうかは、原則として、管理者の意思に任されるので、まったく集会を招集しないということもあり得ます。
しかし、適正な管理をするためには、最低限、年に1回は集会を開くべきだと考えたわけです。
(6)規約・集会の議事録の保管・閲覧
規約および集会の議事録は、管理者が保管しなければなりません。
そして、規約および議事の内容に利害関係を有する者(これからマンションを購入しようとする者など)が、その閲覧を要求してきた場合は、正当な理由がない限り、これを拒むことができません。
さらに、規約および議事録の保管場所について、建物内の見やすい場所に掲示しておく義務もあります。
(7)事務の報告
管理者は、集会において、毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をする義務があります。
この事務報告は、必ず「集会において」行わなければなりません。
集会における報告であれば、区分所有者が質問等をして、管理者の職務内容を適切に監督できるからです。したがって、区分所有者に対して書面による報告を送付するという方法は許されません。
また、毎年1回「一定の時期に」行う必要があります。したがって、ある年は春に報告し、次の年は夏に報告するということはできません。
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