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はじめて建物区分所有法入門7 植杉 伸介

7 共用部分の管理

(1)保存行為

 区分所有法では、共用部分の管理(広義の管理)を3つの行為に区分して、その決定方法を定めています。

・保存行為
 共用部分の現状の維持を図る行為

・狭義の管理
 重大変更と保存行為以外の管理行為

・変更
 共用部分の重大変更


 重大変更は、前述のとおり、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決します。

 それでは、保存行為及び狭義の管理行為は、どのようにして決定するのでしょうか。

 まず、保存行為から見ていきます。


 保存行為に該当するのは、緊急を要するか、または比較的軽度の維持行為であると考えられています。

 月々の管理費で賄えるかどうかが一応の目安です。

 たとえば、共用部分の点検や破損個所の小修繕などです。

 保存行為は、共用部分の維持のため必要不可欠な行為ですし、費用もそれほどかかりません。

 場合によっては、緊急を要することもあります(たとえば、玄関ホールの窓ガラスが破損した場合、雨水が浸入しないように急いで修繕する必要があります)。

 いちいち集会を開いて決議すべき問題ではないといえます。それゆえ、保存行為については、各区分所有者がそれぞれ単独で行為することができることになっています。

(2)狭義の管理行為

 狭義の管理行為とは、保存行為と重大変更を除いた共用部分の管理行為をいい、軽微変更を含んだ共用部分の改良行為がこれに該当します。たとえば、排水管の取替工事や共用部分の清掃など、かなり幅広い内容が含まれます。


 狭義の管理行為は、保存行為に比べて費用もかかるので、ある程度慎重に決定する必要があります。ただ、重大変更ほど区分所有者に与える影響は大きくないので、「4分の3以上」という厳しい決議要件にする必要はありません。

 そこで、狭義の管理行為については、原則として、区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議で決定することにしました。なお、このように区分所有者及び議決権の各過半数による決議のことを「普通決議」と呼んでいます。


 以上のとおり、狭義の管理行為は、集会の普通決議で決するのが原則ですが、規約に別段の定めをすることもできます。

 狭義の管理行為はかなり幅広い内容を含むので、いちいち集会を開いて決議するのは面倒な面もあるからです。たとえば、管理者や理事会の決定に任せる旨の定めなどが考えられます。

(3)損害保険契約行為

 共用部分に火災保険、地震保険などの損害保険をかけることがあります。これは保存行為にあたるのか、それとも狭義の管理行為にあたるのか判断に迷うところです。


 そこで、区分所有法では、共用部分につき損害保険契約をすることは、狭義の管理とみなすという規定を設けました。

 したがって、損害保険契約を締結する場合は、原則として集会の普通決議による必要があります。

(4)特別の影響を受ける区分所有者の承諾

 狭義の管理に関する事項により専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得る必要があります。

 たとえば、自動販売機を設置することを集会の普通決議で決定したところ、設置場所に近い専有部分が自動販売機からの騒音被害を受けるような場合です。

8 共用部分の負担及び利益収取

(1)管理費

 保存行為、狭義の管理、重大変更などの共用部分の管理(広義の管理)を行うには、一定の費用がかかります。このような管理に関する費用(管理費)はだれが負担するのでしょうか。


 管理費を負担すべきは、やはり区分所有者の全員です。共用部分は、区分所有者全員で共有するものだからです。

 区分所有者が全員で負担するとしても、その負担割合をどうするかが次に問題になります。

 たとえば、エレベーターは、1階の居住者はほとんど利用しないので、利用の程度で負担割合を決めると居住階によって負担額が違ってくることになります。


 この点につき区分所有法は、利用の程度を考慮せず、共用部分に対する共有持分の割合に応じて管理費を負担させることにしました。

 さまざまな共用部分について、それぞれの利用の程度を算出することは困難だからです。


 ただし、管理費の負担割合について、規約で別段の定めをすることもできます。

(2)共用部分からの利益収取

 たとえば、共用部分である屋上に看板を掲げる目的で、業者に屋上を賃貸しているような場合は、共用部分から一定の利益が生じます。

 このような利益をだれが収取するかという問題ですが、負担と利益は表裏一体の面があります。

 それゆえ、共用部分からの利益収取は、区分所有者全員が、その共有持分の割合に応じて行うこととされています。


 ただし、共用部分からの利益収取についても、規約で別段の定めをすることができます。管理費の負担と同様に全員均一にしたり、区分所有者に配分せずに管理費に充当するなどの定めが考えられます。

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