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はじめて建物区分所有法入門9 植杉 伸介

2 敷地利用権


(1)通常の敷地利用権

 専有部分を所有する区分所有者は、その敷地について何らかの土地利用権を持っていなければなりません。法律上、土地と建物は別個独立の不動産なので、土地の利用権を持たない建物所有者は、土地を不法占拠していることになるからです。この土地利用権のことを「敷地利用権」といいます。

 敷地利用権の形態として最も多いのは、区分所有者全員で敷地の所有権を共有するというものです。共用部分と同様に、区分所有者は、敷地に対して共有持分を持つのです。


 敷地利用権の形態は、所有権の共有ばかりとは限りません。地主が土地の所有権を保有したままで、区分所有者たちに土地を貸すという形態もあります。

 具体的には、借地権(土地の賃借権または地上権)を設定するのが通常です。

 そして、敷地は区分所有者全員が共同で利用するので、この借地権も区分所有者全員で準共有(所有権以外の権利を共有することを準共有といいます)することになります。


 なお、まれに使用借権という賃料なしに無償で土地を借りる権利を準共有する形態も存在します。

(2)敷地利用権の共有持分割合

 敷地利用権の持分割合について、区分所有法には、区分所有者が複数の専有部分を同時に所有している場合の規定しかありません。


 たとえば、区分所有者Aが2つの専有部分(床面積70㎡の201号室と床面積80㎡の202号室)を所有している場合に、Aの敷地に対する共有持分は、2室分をひっくるめたものとして存在します。

 そうすると、Aが201号室だけをBに売却する場合に、Aの有する敷地に対する共有持分のうち、どの部分がBに移転するかが分からず困ります。


 そこで、同一人物が複数の専有部分を所有している場合に、各専有部分に割り当てられるべき敷地に対する共有持分の割合については、共用部分の持分割合と同じであるとする規定が定められています。


 すなわち、専有部分の床面積割合によることになるので、上の例でいえば、Aの有する敷地利用権のうち15分の7(150分の70)が201号室、15分の8(150分の80)が202号室に割り当てられるわけです。

 なお、規約でこれと異なる持分割合を定めることは可能です。


 それでは、1つの専有部分しか所有していない人についての敷地の持分割合がどうなるかというと、これは通常は、マンションの分譲会社の設定に基づいて、そのまま分譲契約で決まります。

 マンションの購入者が登記をする場合、敷地に対する共有持分を記載する必要があるので、分譲契約で決めておかないと困るからです。


 なお、分譲契約または規約の定めによって共有持分が決められていない場合は、民法の共有の規定により、各共有者の持分は相等しいものと推定されることになります。

(3)特殊な敷地利用権の形態

 敷地利用権は、所有権であれ借地権であれ、区分所有者全員で(準)共有するのが原則です。


 しかし、特殊な形態として、敷地を区分所有者の数だけ分割して、その1筆の土地ごとの所有権・借地権を各区分所有者が単独で有する場合もあります。

 いわゆるタウンハウス(または棟割り長屋)と呼ばれる区分所有建物に見られる方式(分有方式)です。


 ただ、この方式は、通常のマンションには見られない特殊なものなので、本試験に出題されることもほとんどありません。

 それゆえ、この方式の詳しい内容まで押さえる必要はなく、この方式の存在だけ知っていれば十分です。

3 専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止

(1)専有部分と敷地利用権の一体化の原則と例外

 共用部分のところで勉強したとおり、専有部分と共用部分の持分を分離処分することは、原則として禁止されています。

 このことは、専有部分と敷地利用権にも当てはまります。

 敷地利用権は、専有部分を所有するために必要な権利であり、やはり両者は一体であるべきです。

 たとえば、区分所有者Aが、専有部分のみをBに売却して、敷地の共有持分は譲渡しなかった場合、Bは敷地利用権を持たない区分所有者になってしまいます。このような状態は認めるべきではないでしょう。


 そこで、区分所有法は、敷地利用権が(準)共有である場合は、区分所有者は、専有部分と敷地利用権を分離して処分することはできないという規定を設けました。


 ただし、専有部分と敷地利用権の分離処分禁止については、規約で別段の定めをすることが認められています。

 規約に「分離処分できる」という条項を定めれば、分離処分できるようになるのです。


 もっとも、このような規約が通常のマンションで定められることはまずありません。

 規約に別段の定めをすることを認めたのは、主に小規模の区分所有建物を想定したうえでのことです。

(2)登記簿における一体性

 専有部分と敷地利用権が分離処分されることなく、常に一体性をもって処分されるのなら、登記簿上も両者が一体性をもっていた方が都合がよいといえます。


 そこで、区分所有建物の登記においては、分離処分が禁止された敷地利用権について、特殊な登記方法が用意されています。

 具体的には、敷地利用権は土地に対する権利でありながら、土地の登記記録ではなく、区分所有建物の登記記録に記録されることになっています。

 記録される場所は、建物全体の表題部と各専有部分ごとの表題部です。このように、建物の表題部に行われた敷地利用権の登記のことを、「敷地権の表示の登記」といいます。

 これは、専有部分の権利と敷地利用権が一体であるがゆえに、登記簿上も建物の登記記録に一体化したわけです。

(3)分離処分の無効の主張の制限

 専有部分と敷地利用権の分離処分が禁止されているにもかかわらず、これに違反して行われた処分は無効です。

 たとえば、区分所有者Aが、専有部分と切り離して、敷地利用権だけをBに売却したとしても、Bは、敷地利用権を取得することはできないわけです。


 しかし、本来、土地と建物は別個独立の不動産ですから、分離して処分できるのが原則です。

 それを区分所有法で特別に禁止しているのですが、そのことを知らずに買い受けてしまう人があらわれる可能性があります。

 分離処分の禁止を知らずに買い受けた人にとっては、無効といわれることは心外であり、予想外の損失を受けることになります。


 そこで、分離処分禁止違反だから無効ということは、そのことについて善意の相手方に対しては、主張できないとされています。分離処分禁止を知らなかった相手方を保護するためです。


 ただし、敷地権の表示の登記が行われている場合は、この結論がくつがえされます。相手方が善意であっても、無効を主張できるのです。善意の相手方も保護されなくなります。


 前述のとおり、敷地権の表示の登記は、専有部分と敷地利用権の分離処分が禁止され、一体化したことを前提にした登記です。

 この登記が行われている場合に、分離処分を認めてしまうと、登記の仕組みが根底から崩れてしまいます。

 それに、不動産の取引をする場合は、ふつう登記をチェックします。相手方は登記さえ見れば、分離処分できないことが分かったはずですから、無効を主張されてもやむを得ない面があります。

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