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はじめて建物区分所有法入門14 植杉 伸介

2 規約の設定、変更および廃止

(1)規約の設定・変更・廃止の方法

 規約の設定・変更・廃止をする場合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で行う必要があります。

 規約は、マンションの根本規則として、区分所有者全員を拘束する重要なものなので、慎重な手続で決定することにしたのです。


 この区分所有者および議決権の各4分の3以上という決議要件は、規約の別段の定めによって変更することはできません。

(2)特別の影響を受ける区分所有者の保護

 上で述べたように、規約の設定・変更・廃止は全員の合意ではなく、多数決によって決定します。そうすると、多数の横暴により、少数者の利益が害されるおそれがあります。

 そこで、規約の設定・変更・廃止が、一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その一部の区分所有者の承諾を得なければならないことになっています。

 集会の決議が成立しても、特別の影響を受ける区分所有者の承諾がなければ、規約の効力は認められません。


 「特別の影響」とは、規約の設定・変更・廃止の必要性および合理性と、これによって受ける一部の区分所有者の不利益とを比較して、一部の区分所有者が受忍すべき程度を超える不利益を受ける場合をいいます。

 裁判例では、ペットの飼育を禁止する規約の規定を設けた場合、現にペットを飼っていた区分所有者の不利益は、「特別の影響」に当たらないとしたものがあります。

(3)一部共用部分に関する規約の設定・変更・廃止

 一部共用部分について、区分所有者全体の利害に関係せず、かつ区分所有者全員の規約に定めがない事項であれば、その一部の区分所有者だけで規約を設定することができます(一部の区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数の決議による)。


 しかし、このような一部共用部分に関する事項であっても、区分所有者全員による全体の管理規約で定めてもかまいません。

 ただし、一部共用部分について区分所有者全員の規約で定めることにすると、一部共用部分を共用する区分所有者の意思がまったく反映されないおそれがあります。


 そこで、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについて、区分所有者全員の規約の設定・変更・廃止をする場合は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者またはその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対しないことが条件とされています。*8

 具体的には、次のようになります。


 下図のマンションは、1階部分のみが店舗で、2階より上が住居であるとします。


 このマンションで1階の店舗部分のみで利用する一部共用部分について、全体の規約で定めるケースを考えてみましょう。なお、すべて専有部分の床面積は同一とします。


 MNOP以外の者が全員賛成すれば、区分所有者および議決権の各4分の3以上という要件は満たします。

 しかし、MNOPのうち2人以上が反対している場合は、この規約は不成立です。
 4分の1を超える反対があるからです。

 規約が成立するためには、MNOPのうち反対しているのは4分の1以下、つまり反対者は1人だけという状況が必要です。

 これは結局、一部区分所有者だけで数えても、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要ということです。

(4)公正証書による規約の設定

 規約は、区分所有者が集会の決議で設定するのが本来の方法です。

 しかし、一定の事項については、最初に専有部分の全部を所有する者が、単独で規約を設定しておくことが認められています。


 たとえば、集会室を設けることになっている場合、規約共用部分とする旨の規約があらかじめ設定されている方が、マンションを購入する者も安心です。


 規約共用部分となっていない段階では、その集会室になるはずの専有部分は、分譲業者が専有部分として所有しています。

 その後、分譲業者がお金に困って、集会室にする約束を破り、専有部分として第三者に売却するような心配があるのです。


 この事前の規約に関するポイントは2つあります。1つは、規約に設定できる事項です。設定できる事項は、次の4つのものに限られます。

① 規約共用部分の定め、② 規約敷地の定め

③ 専有部分と敷地利用権の分離処分を許す定め

④ 各専有部分に係る敷地利用権の割合の定め

 これらの事項は、実は、登記に深く関連する事項です。
 これらの定めがあるかないかで、登記の記載が変わってくる事項です。

 いったん別の形の登記をしておいて、規約を定めてから変更するよりは、最初から規約を作っておいて登記できた方が、よけいな手間も省けるわけです。


 もう1つのポイントは、この規約は、必ず公正証書を用いて設定しなければならないということです。公正証書によらずに設定した場合、その規約は無効です。


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