はじめて建物区分所有法入門18 植杉 伸介
3 議事
(1)特別決議事項と普通決議事項
集会の議事は、区分所有者および議決権の各過半数で決するのが原則です。
この原則的な決議方法で行う事項を普通決議事項といいます。
普通決議事項に対して、区分所有法には4分の3以上または5分の4以上という特別の多数の賛成を要する事項もあります。
このような特別多数の賛成を要する事項のことを特別決議事項といいます。
区分所有法が定める普通決議事項と特別決議事項には、どのようなものがあるか、以下に列挙しておきましょう。
普通決議事項
①共用部分(敷地・附属施設)の狭義の管理
②管理者の選任・解任
③管理者への訴訟追行権の授与
④管理者がいない場合の規約、議事録、書面決議の書面・電磁的記録の保管者の選任
⑤議長の選任
⑥管理組合法人の理事・監事の選任・解任
⑦理事が数人ある場合の代表理事の選任、共同代表の定め
⑧管理組合法人の事務
⑨義務違反者に対する行為の停止等の請求の訴えの提起
⑩義務違反者に対する訴訟提起における訴訟追行権の授与
⑪小規模滅失の場合の共用部分の復旧
以上は、区分所有法が定める普通決議事項です。これ以外の事項についても、規約で定めれば、集会の普通決議事項とすることはできます。
特別決議事項
①共用部分(敷地・附属施設)の重大変更
②規約の設定・変更・廃止
③管理組合の法人化およびその解散
④義務違反者に対する使用禁止請求、競売請求、引渡請求
⑤大規模滅失の場合の復旧
⑥建替え
⑦団地内の区分所有建物につき団地規約を定めることについての各棟の承認
⑧団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付す旨の決議
以上の特別決議事項のうち、⑥と⑧だけ区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数によります。これ以外は、すべて区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数です。
(2)議決定数の緩和
普通決議事項については、規約で別段の定めをすることができます。
たとえば、区分所有者および議決権の各過半数というのは、集会に出席している区分所有者を基準にするのではなく、欠席者も含めた総区分所有者が基準になります。
この点について、出席区分所有者を基準にする旨の定めや、区分所有者の過半数の賛成は必要なく、議決権の過半数だけで決議が成立する旨の定めなどをすることができるわけです。
なお、当該マンションにおいて特に重要と考えた事項であれば、逆に議決定数を「3分の2」などと厳しく変更することも可能です。
これに対して、特別決議事項の決議要件を「3分の2」や「過半数」に緩和することはできません(ただし、共用部分の重大変更については、区分所有者の定数を過半数まで減ずることができるという例外があります)。
あくまで決議要件を緩和できるのは、普通決議事項だけです。
(3)書面(電磁的方法)・代理人による議決権の行使
議決権は、集会に出席して行使するのが本来の方法です。
しかし、集会の日時に都合が悪い区分所有者は、集会に出席することができません。
出席できない以上、その区分所有者の意思は無視するというのは適切ではありません。
そこで、議決権は、書面または代理人によって行使することが認められています。
書面による議決権の行使とは、区分所有者が集会に出席せず、集会の開催前に、議事について賛否を記載した書面を集会の招集権者に提出することによって、議決権を行使する方法です。
代理人による議決権行使とは、区分所有者本人から代理権を授与された代理人が集会に出席して議決権を行使する方法をいいます。
この代理人の資格について、区分所有法上はなんの制限もありません。だれを代理人にしてもかまいません。
また、規約または集会の決議により、書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子メール等で送信したり、フロッピーディスク等を交付することによって、議決権を行使する方法)によって議決権を行使することもできます。
ただし、書面による議決権行使は、すべての区分所有建物において認められる方法ですが、電磁的方法による議決権行使は、これを認める旨の規約または集会の決議が必要であることに注意してください。
(4)議決権行使者の指定
専有部分を複数の者が共有している場合、共有者全員がそれぞれ議決権を行使したのでは、区分所有者の数や議決権の数の扱いが混乱してしまいます。
共有の場合でも、区分所有者の数は1人とし、議決権も1つにまとめて行使させるべきです。
そこで、共有者が議決権を行使する場合は、共有者間で現実に議決権を行使すべき者1人を定めて、その者が共有者を代表して議決権を行使すべきものとされています。
(5)議長
管理者がいるときは、管理者が集会の議長になります。
区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものが集会の招集を請求して、これに応じて管理者が集会を招集した場合でも、議長になるのは管理者です。
これに対して管理者がいないときは、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものによって集会が招集されますが、この場合には、集会を招集した区分所有者の1人が議長となります。
以上が区分所有法の原則ですが、規約に別段の定めがある場合や別段の決議が行われた場合は、それに従って議長が決まります。
(6)議事録の作成および保管の義務
集会の決議の効力は、区分所有者全員に及びます。それゆえ、議事の内容について書面または電磁的記録により議事録を作成したうえで保管し、利害関係人の閲覧に供する必要性は、規約と同様に存在します。
そこでまず、区分所有法は、議事録の作成義務者を定めました。この場合の適任者は議長ですので、議事録の作成義務は議長に課されます。
そして、議事録の記載(記録)内容について後でトラブルが生じないように、議事録には、議事の経過の要領およびその結果を記載したうえで、議長および集会に出席した区分所有者2人が署名押印しなければならないことになっています。
なお、電磁的記録により議事録が作成されている場合は、通常の署名押印は不可能なので、電子署名と呼ばれる方法が用いられます。
また、この議事録は、規約と同じく、管理者が保管し、利害関係人の閲覧に供しなければなりません。
管理者がいないときは、規約または集会の決議で定められた者が保管し、閲覧に供することになるのも規約と同じです。

