はじめて建物区分所有法入門19 植杉 伸介
4 占有者の意見陳述権
(1)区分所有建物における占有者の義務
区分所有法において「占有者」とは、区分所有者以外で専有部分を占有する者(賃借人等)をいいます。
占有者は、管理組合の構成員ではありませんが、建物の管理または使用に関して共同の利益に反する行為をしてはならず、また、建物・敷地・附属施設の使用方法について、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同じ義務を負います。
占有者は現実に区分所有建物を使用している者なので、このような義務を課さないと区分所有建物の秩序を保てないからです。
(2)意見陳述権を有する占有者
このような占有者の立場からすると、集会で決議される内容について無関心ではいられません。
そこで、会議の目的たる事項につき、占有者が利害関係を有する場合は、集会に出席して意見を述べることができるものとされています。
なお、占有者に認められた権利は、集会に出席して意見を述べることだけで、議決権を行使することはできない点に注意してください。
集会に出席して意見を述べることができるのは、すべての占有者ではありません。
「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者」に限られます。
たとえば、区分所有者に無断で専有部分を占拠しているような者は、集会に出席して意見を述べることはできません。区分所有者との賃貸借契約などによって、正当に占有する者に限られるのです。
また、区分所有者の家族などの同居者は、ここでいう「占有者」には含まれません。
これらの者は、同居者である区分所有者に働きかけることによって、間接的に自分の意思を管理組合の集会に反映することができます。
(3)占有者に利害関係がある事項
占有者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合でなければ、集会に出席して意見を述べることができません。
「利害関係を有する場合」とは、建物・敷地・附属施設の使用方法に関して集会の決議をする場合です。
たとえば、専有部分の居住目的以外の使用の禁止や、ペットの飼育禁止について集会で決議する場合です。
これに対して、共用部分の大規模修繕積立金や管理費の増額について決議する場合は、「利害関係を有する場合」に該当しないと考えられています。
この場合、賃料の増額に結びつく可能性がありますが、それは間接的な影響に過ぎないからです。
(4)集会招集権者の掲示義務
占有者に集会へ出席して意見を述べる権利があるとしても、そもそも集会の開催およびその議題が分からなければ、権利行使しようがありません。
そこで、集会の議題が占有者の利害に関係する場合は、集会を招集する者が、招集通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所および会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所(掲示板や建物の出入口等)に掲示しなければならないことになっています。
これによって、占有者は集会に出席することが可能となります。
なお、「招集通知を発した後遅滞なく」というのは、掲示のタイムリミットを定めたものですから、必ずしも招集通知を発した後に掲示をする必要はなく、通知と同時とか、通知を発する前に掲示することもできます。

