宅建業法その12 クーリングオフ
クーリングオフ
クーリングオフとは,宅建業者が自ら売主で,買主が宅建業者ではない場合に,買受けの申込みや契約の締結が一定の場所でなされたもので,かつ,一定の期間内であれば,理由の如何を問わず,「買受けの申込みの撤回」または「売買契約の解除」ができるという制度で,購入意思が不安定な状態で買受けの申込みや契約締結をした一般消費者を保護するための規定です。
(1)買主がクーリングオフできる要件
買主がクーリングオフできるのは,以下の四つの要件をすべて満たしている場合です。このどれか一つでも該当しないものがあればクーリングオフはできません。
1) 事務所等以外の場所で,買受けの申込みや契約の締結がなされたものであること。
2)クーリングオフできることを書面で告げられた日から8日間以内であること。
3) 履行関係が終了していないこと。つまり,「引渡し,かつ,代金全額の支払」がなされていないこと。
4) 買受けの申込みをした者や買主が宅建業者ではないこと。
①事務所等で買受けの申込みまたは契約を締結したとき
事務所等で,買受けの申込みや契約が締結された場合はクーリングオフをすることはできません。
●事務所(媒介・代理の宅建業者のものも含む。)
本店(主たる事務所),支店(従たる事務所),契約締結権限を有する者が置かれている出張所
●事務所以外で専任の取引主任者を設置する義務のある場所(媒介・代理の宅建業者のものも含む)
以下のもので,土地に定着する建物内にあるものに限る。
・ 契約行為等を行う案内所(一団の宅地または建物を分譲するために設置。モデルルームなども含まれる。)
・ 契約行為等を行う展示会場
・ 契約行為等を行う出張所 (契約締結権限を有する者が置かれていない場所)
●相手方の自宅・勤務先 相手方から申し出た場合に限る。
このため,「契約行為等を行わず,案内だけをする案内所」,「土地に定着していないテント張りの,契約行為等を行う案内所」,「相手方の申出がない場合の相手方の自宅や勤務先」で,買受けの申込みや契約が締結された場合はクーリングオフをすることができます。
なお,宅建業者は,クーリングオフの適用がある場所では,標識に必ずその旨を表示しなければなりません。※1
※1 契約行為等を行う案内所の標識には,クーリングオフの適用がある旨の表示がされていない。
そのため,契約行為等を行う案内所が,「50条2項の届出がされていない場合」,「買受けの申込みをしたときに専任の取引主任者がいなかった場合」でも,その場所でなされた買受けの申込みや契約の締結についてクーリングオフはできないことに注意。
■クーリングオフの可否
買受けの申込みの場所と契約締結の場所が異なる場合は,買受けの申込みの場所で判断します。
契約締結の場所
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買受けの申込み 事務所等→クーリングオフできない
場所事務所等 事務所等以外→クーリングオフできない
事務所等以外 事務所等→クーリングオフできる
事務所等以外→ クーリングオフできる
②書面で告げられた日から起算して8日を経過したとき
事務所等以外の場所で,買受けの申込みや売買契約を締結した者(買主)が,申込みの撤回等を行うことができる旨及びその方法について,国土交通省令で定める書面を交付して告げられた日から起算して8日※2を経過すると,もはやクーリングオフをすることはできません。
※2告げられた日から起算するので,初日不算入の原則はここでは適用されない。
例えば,申込みの撤回等を行うことができる旨及びその方法について書面で告げられたのが日曜日だとするとそれから8日間,つまり翌週の日曜日までクーリングオフできるが,翌週の月曜日になるとクーリングオフできなくなる。
なお,宅建業者が書面を交付して申込みの撤回等ができる旨及びその方法について告げない場合は,起算日が定まらないため,クーリングオフできる期間に制限はないことになります。
同様に,宅建業者が申込みの撤回等ができる旨について口頭のみで告知した(書面を交付しなかった)場合も,クーリングオフできる期間の起算日が定まらないため,原則としていつでもクーリングオフできます。
③履行関係が終了している場合
引渡しを受け,かつ,代金も全額支払われると,買主はクーリングオフをすることはできなくなります。
履行関係が終了しているのにクーリングオフできるとすると,原状回復が難しくなるからです。
しかし,「引渡しを受けただけ」,「代金の支払はすんだが,引渡しは受けていない」,「引渡しは受けたが,代金の支払が一部だけ」のように,履行関係がまだ終了していない場合にはクーリングオフをすることができます。
④相手方が宅建業者の場合
クーリングオフの規定は,買受けの申込みをした者や買主が宅建業者でない場合の救済措置なので,宅建業者が買受けの申込みをしたときや買主のときはクーリングオフをすることはできません。
(2)クーリングオフの方法とその効力の発生時点
1) クーリングオフの方法
買受けの申込みをした者や買主がクーリングオフによる撤回や解除をするときは,書式については特に規定はありませんが,必ず書面でしなければなりません(クーリングオフは口頭ではできない)。
2) クーリングオフの効力
民法では,相手方に到達したときに意思表示の効力が生じます(到達主義)が,クーリングオフの効力は書面が発せられたときに生じます(発信主義)。
3) クーリングオフの効果
クーリングオフによる申込みの撤回や契約の解除が行われると,買受けの申込みや契約の締結はなかったことになるので,次のような効果が生じます。
●宅建業者は,それまで受領した一切の金銭(申込証拠金,手付金,内金,中間金)を返還しなければならない
●宅建業者は,申込みの撤回や契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求することはできない。
4) 買主に不利な特約は無効
クーリングオフの規定に反する特約で買主に不利なもの―例えば,クーリングオフできる期間を短縮したり,買主がクーリングオフした場合は手付金を返還しないとか,損害賠償しなければならないとする特約は無効です。
クーリングオフ制度は宅建業者ではない者を保護するためにあるので,特約で制度そのものが機能しなくなるのを防ぐためです。
5) 債務不履行による解除,手付放棄による解除との関係
クーリングオフができない場合でも,債務不履行による解除,手付放棄による解除をすることができます。
クーリングオフの規定に違反 監督処分→指示処分 罰則→なし
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◇予想問題
1 売買契約が,売主である宅建業者が行う一団の建物の分譲のためのモデルルームで締結された場合に,当該モデルルームについて宅建業法第50条第2項の届出がされていないときは,買主は,クーリングオフをすることができる。
2 売主を宅建業者であるA,買主を宅建業者でないBとの宅地の売買契約において,Bがクーリングオフの規定による当該売買契約の解除を行う場合は,Aに対して国土交通大臣が定める書式の書面をもってその意思表示を行わなければならない。
3 宅建業者Aが自ら売主として宅建業者でない買主Bと土地付建物の売買契約を締結した。Bがホテルのロビーにおいて買受けの申込をし,当該場所において売買契約を締結した場合,既に当該土地付建物の引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払った場合でも,Aが法第37条の2に規定する内容について書面で説明していないときは,Bは当該契約を解除することができる。
4 宅建業者Aが宅建業者でないBに宅建業法第37条の2の規定により契約を解除できる旨告げた場合で,同条の規定に基づき解除できる期間を経過したとき,Bは,Aに債務不履行があったとしても,不履行を理由に契約を解除することはできない。
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〔正解&解説〕
1 契約行為を行う案内所等での買受けの申込みや契約の締結については,50条2項の届出がされていないとしても,クーリングオフはできない。×
2 クーリングオフをする旨の書面は特に書式は定められていない。
3 書面をもってクーリングオフできる旨及びその方法を告知されていなくても,引渡しを受け,かつ,代金も全額支払われるとクーリングオフをすることはできない。×
4 クーリングオフできる期間が経過しても,債務不履行による解除は,することができる。×

