宅建業法その14 営業保証金等
14 営業保証金等
営業保証金は,宅建業者が供託所に一定金額を供託し,取引の相手方が受けた損害をその供託金から弁済させる制度です。
(1)供託した旨の届出義務
宅建業者は,免許を受けた後,営業保証金を供託した旨を,供託書の写しを添えて,免許権者に届け出ないと,業務を開始することができません)。
免許権者は,免許の日から3ヵ月以内に宅建業者から供託した旨の届出がない場合※1 は,その届出をするよう催告をしなければならず,この催告が到達した日から1ヵ月以内に宅建業業者が供託した旨の届出をしないときはその免許を取り消すことができます。
※1 宅建業者が供託しなければならない期限は特に定められてはいないので,免許の日から3ヵ月以内に宅建業者から供託した旨の届出をしなければならないわけではない。
(2)営業保証金の供託手続
① どこに,いくら供託するか
供託先→ 主たる事務所(本店)のもよりの供託所(新規開業時だけでなく,このほかに供託すべき場合-支店増設時,還付による不足額の供託など-も同じ。)
供託する額→ 主たる事務所について1,000万円,その他の事務所1ヵ所※2 について500万円として計算した金額の合計
※2 「その他の事務所」とは,主たる事務所以外の事務所(従たる事務所(支店), 契約締結権限を有する使用人を置く出張所)が該当する。
②営業保証金の供託方法
有価証券で供託する場合は,額面上の金額を供託したとは認められず,以下の表の評価額で供託したことになります。
有価証券の種類 評価額
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国債証券 額面金額の全額
地方債証券,政府がその債務
について保証契約をした債券 額面金額の90%
その他国土交通省令で定める
有価証券 額面金額の80%
③事務所を増設したとき
宅建業者が事業の開始後に,新たに事務所を設置したとき(免許換えによる増設も含む。)は,その事務所1ヵ所について500万円の営業保証金を供託し,供託書の写しを添付して,その旨を免許権者に届け出なければなりません。
また,供託した旨の届出をした後でなければ,その事務所で事業を開始できないのは新規開業の場合と同じです。
(3)供託所の変更による営業保証金の保管換えと二重供託
供託すべきもよりの供託所が変更になった場合(主たる事務所の移転によってもよりの供託所が変わる),新たな供託所に営業保証金を供託しなければなりません。
このような場合は,①金銭のみで供託しているときと ②「有価証券のみ」または「金銭+有価証券」で供託しているときとで,以下のように,手続が異なります)。
①金銭のみで供託しているとき-保管換え
金銭のみで供託しているときは,新たな営業保証金を供託する必要はなく,供託金を新たな供託所に移すだけでよく,このことを保管換えといいます。
宅建業者は,遅滞なく,費用を予納して,現に供託している供託所に対して,移転後の主たる事務所のもよりの供託所への保管換えを請求しなければなりません。
②「有価証券のみ」or「金銭+有価証券」で供託しているとき-二重供託
有価証券のみ,または有価証券+金銭で供託しているときは,営業保証金を移すことはできないので,現に供託しているものとは別に,遅滞なく,移転後の主たる事務所のもよりの供託所に,新たに営業保証金を供託しなければなりません。
一時的に二重に営業保証金を供託することになることから,二重供託といわれています。従前の供託所に供託していた営業保証金は,新たな営業保証金を供託した後に,取り戻すことができます。
■営業保証金の保管替え等の届出
宅建業者は,
(1)の営業保証金の保管替えがされ,または(2)の営業保証金を新たに供託したときは,
遅滞なく,その旨を,供託書正本の写しを添附して,免許権者に届け出なければなりません。
(4)営業保証金の還付と補充供託
宅建業者と宅建業に関して取引をした者は,その取引により生じた債権(債務不履行や不法行為による損害賠償)に関して,営業保証金から,その債権の弁済を受ける権利を有します。
この権利を実行して弁済を受けることを営業保証金の還付を受けるといい,宅建業者から損害を受けた者が,供託所に,供託物払渡請求書を直接提出して請求します。
①還付を受けることができる者
還付を受けることができるのは,宅建業に関して取引をした者であり,具体的には,宅地・建物の売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介・代理の取引をした者です。
宅建業に関係ない債権を有していても,還付を受けることはできません。
■還付を受けることができない者
宅建業に関する広告を扱った広告業者,賃貸物件の管理委託による債権を有する者,工事代金債権を有する者,宅建業者に対して貸付債権を有する者
②還付の額
還付を受けることができるのは供託されている営業保証金の範囲内です。したがって,宅建業者から損害を受けた者が有する債権全額が還付されるとは限りません。
営業保証金の還付で弁済しきれないものについては宅建業者の財産から弁済を受けることになります。
なお,還付請求権者と取引した事務所が本店・支店・出張所などのどれであっても,還付を受ける金額に違いはなく,供託していた営業保証金の金額と同一です。
③補充供託
営業保証金が還付されると営業保証金が不足するので,本来供託すべき金額に戻すために,補充する必要があります。
宅建業者は,免許権者から不足の通知を受けた日から2週間以内に,不足分(還付された金額に相当する額)を供託しなければならず,供託した場合は,その日から2週間以内に,その旨を免許権者に届け出なければなりません。
(5)営業保証金の取戻し
営業保証金の取戻し事由
1)宅建業者でなくなったとき(免許の有効期間が満了,廃業等の届出により免許が失効したとき,個人業者が死亡したり,法人業者が合併により消滅したとき,免許が取り消されたとき)※3
2)一部の事務所を廃止して供託した額が超過したとき(超過分の取戻し)
3)営業保証金が一時的に二重供託になっているとき
4)保証協会の社員になって,営業保証金の供託を免除されたとき
※3宅建業者の死亡・廃業などにより取引の結了範囲でのみなし宅建業者とされる者は,その取引が結了しない限り,取戻しをすることはできない。
①取戻しのための公告
宅建業者は,営業保証金を取り戻そうとするときには,原則として,還付請求権者に対して,6ヵ月を下らない一定期間内に還付を受けることを申し出る旨を官報※4で公告しなければなりません。
その期間内に還付請求権者から申出がないときに,宅建業者は営業保証金を取り戻すことができます。
なお,宅建業者は,還付請求権者に対して公告をしたときは,遅滞なく,その旨を免許権者に届け出なければなりません※5。
※4宅建業者と取引した者は全国にいるので,都道府県知事免許業者でも官報で公告しなければならない。
※5公告した旨の届出をした者は,公告に定める期間内に,還付請求権者の申出がなかったときは,その旨の証明書の交付を免許権者に請求することができる。
宅建業者は,この証明書を供託物払渡請求書に添付して,供託所に取戻しを請求する。
②公告をしないで取戻しができる場合
1)主たる事務所を移転し新たに営業保証金を供託して,従前の供託所に供託していた営業保証金を取戻すとき(二重供託)
2)保証協会の社員になって,営業保証金の供託を免除されたとき
3)取戻し事由が発生してから10年を経過したとき※5
※5取戻し事由の発生から10年を経過していれば,債権の消滅時効(10年)により還付請求権も消滅している可能性が高い。
(6)監督処分と罰則
●供託した旨の届出をしないで事業を開始したとき(新規開業・事務所の増設)
監督処分→業務停止処分(情状が特に重いときは免許取消処分)
罰則→6ヵ月以内の懲役もしくは100万円以内の罰金またはその併科
●催告が到達した日から1ヵ月以内に宅建業者が供託した旨の届出をしないとき
監督処分→免許権者は,免許を取り消すことができる。
罰則→なし
●補充供託をしないとき
監督処分→業務停止処分(情状が特に重いときは免許取消処分)
罰則→なし
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◇予想問題
1 宅地建物取引業者が有価証券を営業保証金に充てるときは,国債証券についてはその額面金額を,地方債証券又はそれら以外の債券についてはその額面金額の100分の90を有価証券の価額としなければならない。
2 宅地建物取引業者は,本店について1,000万円,支店1ヵ所について500万円の営業保証金を,それぞれの事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。
3 宅地建物取引業者Aが2つの支店を廃止し,その旨の届出をしたときは,営業保証金の額が政令で定める額を超えることとなるので,その超過額1,000万円について公告をせずに直ちに取り戻すことができる。
4 Aが販売する宅地建物についての販売広告を受託した者は,その広告代金債権に関し,Aが供託した営業保証金について弁済を受ける権利を有する。
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〔正解&解説〕
1 国債以外では,地方債証券,政府がその債務について保証契約をした債券は額面の90%,それ以外の国土交通省令で定める債券は額面の80%である。×
2 営業保証金は,主たる事務所のもよりの供託所に供託する。支店についての営業保証金も,主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。×
3 保証協会の社員が支店を廃止したときには,保証協会は公告をしなくても弁済業務保証金を取り戻せるが,宅建業者が支店廃止による営業保証金の超過分を取り戻すには,公告をしなければならない。×
4 広告代金債権は,宅建業者と宅建業に関して取引したことによる債権ではない。還付を受けることはできない。×

