はじめて建物区分所有法入門20 植杉 伸介
5 書面または電磁的方法による決議
(1)集会の省略
決議は、集会を開いたうえで行うのが原則です。
決議を行う前に顔を合わせて議論するプロセスも重要だからです。
しかし、賃貸化が進み区分所有者が各地に散在しているマンション等では、実際に一堂に会して集会を開催することが困難な場合があります。
また、生活様式の多様化により頻繁に臨時集会を開催することが実際上、難しくなっており、どんな状況においても集会の招集を必要とすると、機動的な組合運営の妨げになります。
そこで、区分所有者全員の承諾があるときは、集会を開かずに、書面または電磁的方法により決議することが認められています。
これは、区分所有者全員の承諾がなければ認められませんが、その承諾は集会を開かずに決議をするということに対して行われます。
議題の内容について全員が賛成している必要はありません。
したがって、決議の成否はそれぞれの事項の成立要件によります。仮に当該決議内容が普通決議事項であれば、区分所有者および議決権の各過半数の賛成で成立するわけです。
なお、書面による決議による場合は、区分所有者の承諾方法について特に制限はありませんが、電磁的方法による決議をしようとするときは、集会を招集する者は、あらかじめ、区分所有者に対し、その用いる電磁的方法の種類および内容を示し、書面または電磁的方法による承諾を得なければならないことになっています。
(2)全員の書面または電磁的方法による合意
区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意があれば、上記の書面または電磁的方法による決議があったものとみなされ、集会の決議と同一の効力を有します。
これは、議題の内容について全員が賛成している場合に認められるものです。
たとえば、駐車場の増設が問題になっている場合に、区分所有者全員が駐車場の増設に賛成しているような場合です。
これは、普通決議事項であれ特別決議事項であれ、すべての決議事項について認められます。
区分所有者全員一致して賛成しているのですから、集会の決議があったのと同じに考えても問題ないのです。
(3)新築分譲マンションの規約承認販売
マンションの分譲は、一般に建物の完成前に行われる青田売りが多く、また、完成売りであっても分譲業者から引渡しを受けた区分所有者がすぐにそのマンションに適合する規約を制定することは、かなり困難です。
そこで、分譲業者は、建物の分譲とともに規約案を用意しておき、管理組合の成立とともに、規約がすみやかに発効する途を確保しておく必要があります。
その方法として、前述の書面または電磁的方法による決議の規定が利用されています。
すなわち、分譲業者が規約案を作成しておき、これを購入者に提示し、その規約案に同意した旨の書面の提出を求めます。
この方法を購入者ごとに順次繰り返すことにより、最終的に区分所有者全員の書面による合意が成立したことになります。
これによって、規約について集会の決議が行われたとみなされ、規約が成立したことになるのです。
(4)書面等の保管
書面または電磁的方法による決議は、集会の決議と同じ効力があるので、この書面または電磁的記録を保管する必要性は、議事録と同じです。
それゆえ、書面または電磁的方法による決議が行われた場合の書面または電磁的記録は、議事録と同じく、管理者が保管し、利害関係人の閲覧に供します。
また、管理者がいないときは、規約または集会の決議で定められたものが書面または電磁的記録を保管し、利害関係人の閲覧に供することになります。

