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建物区分所有法21 「管理組合法人」

はじめて建物区分所有法入門21 植杉 伸介

第8章 管理組合法人


1 管理組合法人の成立等

(1)法人化の要件と手続
 
 管理組合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議により、法人化することを決定できます。
 この決議においては、管理組合が法人になることとのほか、管理組合の名称と事務所を必ず定める必要があります。

 われわれ生きている人間に名前と住所があるように、管理組合も法的な人格が与えられる以上、その名称と事務所が必ず必要なのです。
 ただし、集会の決議が成立しただけでは、まだ法人格は発生しません。

 さらに、管理組合の主たる事務所の所在地で、法人設立の登記をしなければなりません。
 登記をしてはじめて法人が成立したことになります。登記は管理組合法人が成立するための要件なのです。


 管理組合が法人格を取得すると、管理組合名義での不動産の登記ができるなど、管理組合の財産と構成員の財産の区別が明確になるなどのメリットがあります。

 ただ、この点以外では、法人化していない管理組合と実質的な差異はほとんどありません。


(2)名称
 
 管理組合が法人化された以上、その管理組合は、「管理組合法人」と称して行動しなければなりません。

 また、管理組合法人の名称を定める際は、必ず「管理組合法人」という文字を使わなければなりません。

 たとえば、「住新マンション管理組合法人」といった名称を定めることになります。
 これは、取引の相手方等にその管理組合が法人化されていることと、区分所有法上の管理組合法人であることを明確にするためです。

 なお、当然ですが、管理組合法人でないものが、その名称中に「管理組合法人」という文字を用いることはできません。第三者が管理組合法人と勘違いして損害を受けるおそれがあるからです。

(3)管理組合法人の権限
 
 管理組合法人は、その事務について区分所有者を代理する権限を有します。

 また、共用部分等について設定された損害保険契約に基づく保険金額、共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求・受領についても、同様に代理権を有します。
 
 管理組合が法人化されていない場合、これらの代理権は「管理者」に帰属します。

 しかし、この場合の代理権の帰属先は、「理事」ではなく、「管理組合法人」であることに注意してください。
 理事は、区分所有者の代理人である管理組合法人を代表して行動するという関係になります。


 上記の管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者には対抗することができません。


 管理組合法人は、規約または集会の決議により、その事務(損害保険金・損害賠償金・不当利得返還金の請求・受領を含む)に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができることができます。

 そして、規約によって管理組合法人に訴訟追行権が与えられていて、現実に管理組合法人が原告または被告になったときは、遅滞なく、区分所有者に通知しなければなりません。

2 法人化以前の管理組合との関係

(1)従前の決議等の承継

 管理組合が法人になる前に存在した集会の決議や規約は、管理組合法人における集会の決議または規約と同一の効力を有します。

 また、管理者が職務の範囲内で行った行為は、法人化前には区分所有者全員に効果が帰属していたのですが、法人化により管理組合法人に帰属することになります。

 法人化前の管理組合と法人化後の管理組合は、実質的には同一の存在だからです。

(2)管理者の権限の消滅

 管理組合法人には、その代表者である理事が必ず置かれます。

 そして、共用部分等の保存、集会の決議の実行、規約で定めた行為の実行といった管理者の職務は、すべて理事が行うことになります。

 そうすると、管理組合が法人化されてもそのまま管理者が存続したのでは、理事の権限と管理者の権限がぶつかり合ってしまいます。


 そこで、管理組合法人が成立すると、管理者の権限は自動的に消滅し、管理者は当然に退任したことになります。

 共用部分を管理者に管理所有させていた場合も、管理所有という状態はなくなります(管理組合法人では、管理所有という制度は利用できません)。

 また、管理者に訴訟追行権を付与していた場合、管理者の訴訟追行権は消滅し、管理組合法人に訴訟追行権が属することになります。


 それゆえ、管理組合法人においては、管理者について定めた区分所有法の規定は、適用が排除されるか、「管理者」とある部分を「管理組合法人」または「理事」に読み替えて適用されます。

 たとえば、規約の保管義務者を「管理者」とする規定は、「理事」と読み替えられます。