建物区分所有法22 「理事」
はじめて建物区分所有法入門22 植杉 伸介
3 理事
(1)理事の選任・解任
管理組合法人には、必ず理事を置かなければなりません。
管理組合法人では、法人自体が権利義務の主体となりますが、法人という抽象的な存在が意思を表示できるわけではありません。法人を代表して、実際に意思表示等を行う機関である理事の存在は不可欠なのです。
理事の選任・解任は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者および議決権の各過半数の集会の決議で行われます。この点は、管理者の選任・解任と同じです。
また、理事への就任には選任された者の承諾が必要なことや、規約で理事の選任について定めることもできるということ、理事に不正行為等があるときは各区分所有者が裁判所に解任請求できるということも、管理者の場合と同じです。
理事の選任資格について、区分所有法上の制限は特にありません。
しかし、管理者と違って、マンション管理会社等の法人を理事に選任することはできないと考えられています。
法人自体は意思表示できないので、理事が法人を代表して意思表示を行うという趣旨からすると、法人の代表者がまた法人というのでは意味がないからです。
(2)理事の代表権
理事は、管理組合法人を代表します。代表とは、理事の行為が法人の行為となり、その行為の効果がすべて法人に帰属する関係をいいます。
理事が数人いるときは、各自が管理組合法人を代表する権限を有します。
しかし、複数の理事がバラバラに行動すると、それがすべて法人に帰属し、矛盾や混乱が生じるおそれがあります。そこで、規約または集会の決議によって、代表理事を定めたり、共同代表を定めることもできます。
代表理事とは、複数の理事の中から代表権を有する理事を決め、他の理事には代表権を認めないとする制度です。
また、共同代表とは、各理事が単独行動で代表することを認めず、理事が共同で行動しないと代表できないとする制度です。
さらに、規約または集会の決議によって、理事の代表権に対して一定の制限を加えることもできます。
たとえば、理事が代表権を行使するには、理事会の決議が必要であるとしたり、100万円以上の取引に関する行為については、そのつど集会の決議が必要とするような場合です。
これらの制限に違反して行われた行為は、原則として無効となります。
しかし、このような制限を知らない第三者を保護する必要があるので、代表権に対する制限は、そのことについて善意の第三者に対しては対抗できないとされています。
(3)理事の任期等
理事の任期は原則として2年です。ただし、規約の別段の定めにより、この2年という期間を変更することができますが、その場合でも3年を超えることはできません。
理事の数については、なんら法律上の制限はありません。最低1人いればよいだけで、建物の規模などに応じて数人の理事を選任することもできます。
(4)理事が欠けた場合
任期満了や辞任によって理事が欠け、または規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任によって退任した理事は、新たに選任された理事が就任するまでは、引き続き理事としての職務を行います。管理組合法人の業務が停止しないようにするためです。
なお、病気等により理事が辞任した場合のように、退任した理事が職務を継続することによって業務の停止を防ぐことができない場合は、利害関係人または検察官の請求により「仮理事」が選任されることになります。
4 監事
(1)監事の職務
管理組合法人には、必ず監事を置く必要があります。
監事の職務は、
①法人の財産の状況を監査すること、
②理事の業務執行の状況を監査すること、
③財産の状況または業務の執行につき不正な事実を発見したときは、集会で報告すること、
④③の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること、
…の4つです。
監事は、理事の行為等を監査するのがその職務です。そのため、監事は、理事またはその監督下にある管理組合法人の使用人とを兼ねることはできないとされています。自分で自分を監査したのでは、適正な監査を期待できないからです。
(2)監事の任期等
監事の選任・解任、任期、員数などについては、すべて理事と同じです。
すなわち、監事は、規約に別段の定めがない限り、集会の普通決議により選任・解任されます。
そして、その任期は原則2年ですが、3年を超えない範囲で規約で任期を変更することができます。
監事の員数に制限はありません。
(3)監事の代表権
管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する権限を有します。
管理組合法人と理事との利益が相反する事項とは、たとえば、管理組合法人と理事個人が売買契約を締結するような場合です。
このような場合に理事が管理組合法人を代表して契約すると、その理事個人の利益を優先させて、管理組合法人の利益が害されるおそれがあります。
管理組合法人が所有する土地を、理事個人が不当に安い値段で購入する契約となる危険があるのです。

