建物区分所有法24 「義務違反者に対する措置」
はじめて建物区分所有法入門24 植杉 伸介
第9章 義務違反者に対する措置
1 義務違反行為の停止等の請求
(1) 請求の目的
区分所有者または占有者が、建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合、またはその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、その行為の停止等を請求することができます。
請求の内容は、具体的状況に応じて、①行為の停止、②行為の結果の除去、③行為を予防するために必要な措置、のいずれかになります。
①行為の停止
現在している行為をやめ、将来においてその行為をしないこと。たとえば、騒音の原因であるカラオケをやめること。
②行為の結果の除去
侵害物を撤去したり原状回復のための措置を講ずることによって、侵害状況を取り除くこと。たとえば、共用部分に設置した物置を撤去すること。
③行為を予防するために必要な措置
侵害行為が発生するおそれがある場合に、それを予防するための措置をとること。たとえば、店舗部分でカラオケ営業を予定している場合に、防音工事をさせること。
この請求は、区分所有者に対してだけでなく、共同の利益に反する行為を行っているのが賃借人等の占有者の場合は、占有者に対しても行うことができます。
(2)訴訟による請求
行為の停止等の請求は、訴訟によらず行うこともできます。しかし、より確実に行為の停止等を実現したい場合は、訴訟によって請求することになります。
ただし、訴訟によって請求する場合は、必ず集会の決議(普通決議)によらなければなりません。訴訟による場合は訴訟費用等もかかるので、ある程度慎重な手続で決定すべきだからです。
なお、通常の普通決議事項は、規約の定めにより、管理者の決定に委ねることなどが認められますが、行為の停止請求訴訟の提起については認められないことに注意してください。個別の事案ごとにそのつど決議をしなければなりません。
決議に基づいて訴訟を提起する場合、管理組合が法人化されているときは、管理組合法人の名で訴えを提起します。
これに対して、管理組合が法人化されていないときは、他の区分所有者全員で訴えを提起するのが原則です。
しかし、全員での訴訟追行は不便なので、集会の決議(普通決議)により、管理者または特定の区分所有者を指定して、その者に訴訟追行させることもできます。
なお、管理者に対しては、規約の定めにより、その職務上の行為に関する一般的な訴訟追行権を与えておくことができますが、その規約で与えられた訴訟追行権の中に、この停止請求訴訟に関する訴訟追行権は含まれません。
つまり、停止請求訴訟の訴訟追行権を管理者に与える場合は、そのつど集会の決議による必要があるわけです。

