建物区分所有法25 「専有部分の使用禁止請求」
はじめて建物区分所有法入門(仮題) その25 植杉 伸介
2 専有部分の使用禁止請求
(1) 請求の目的
義務違反行為に対しては、前述の行為の停止等を請求するという手段がありますが、この手段では区分所有者の共同の利益を守れない場合があります。
たとえば、停止等の請求をしても、違反行為を繰り返すような場合です。
そこで、より強力な手段として、専有部分を使用すること自体を禁止する手段を認めることにしました。義務違反行為を行う区分所有者を専有部分からしばらく追い出してしまうのです。
この使用禁止請求は、非常に強力な手段なので、次の条件を満たしている場合でないと認められません。
① 義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
② 行為の停止等の請求では、共同生活上の障害を除去して、共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
①の条件は、軽微な違反行為によって、このような強力な請求を認めるべきではないからです。
②の条件は、行為の停止等の請求で目的を達成できるなら、使用禁止請求まで行う必要がないからです。
なお、前提として、実際に行為の停止等の請求を試みることまでは要求されていません。
最初から行為の停止等の請求では実効性がないことが明白な場合は、いきなり使用禁止請求を行うことができます。
(2)訴訟手続の要件
使用禁止請求は、必ず訴えをもって行わなければなりません。強力な手段なので、裁判所が請求を認めるべきかどうかを判断することにしたのです。
使用禁止請求訴訟を提起する場合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要です。専有部分を使用する権利を奪う強力な手段なので、決議要件も厳しくしたのです。
管理組合法人では法人の名で理事が代表して訴訟を提起し、法人でない管理組合では原則として区分所有者全員が訴訟を提起するが、集会の決議(普通決議)により、管理者または特定の区分所有者を指定して、その者に訴訟追行させることもできる点などは、すべて前述の行為の停止等の請求訴訟と同じです。
使用禁止請求について決議する際は、あらかじめ当該義務違反者に対して弁明の機会を与えなければなりません(前述の行為の停止等の請求の場合は、弁明の機会を与える必要はありません)。強力な手段なので、本人の言い分も聞くことにしたのです。
(3)使用禁止の内容等
使用禁止請求が認められたとしても、永久に専有部分が使用できなくなるわけではありません。裁判所が「相当の期間」を定めて、その期間中だけ使用が禁止されます。
この請求では、「専有部分」の使用が禁止されますが、これに伴って共用部分や附属施設の使用も付随的に禁止されることになります。
使用が禁止された場合、当該区分所有者自身による使用だけでなく、その家族等による使用も禁止されます。しかし、専有部分を第三者に賃貸して使用させることは可能です。
なお、使用禁止中でも、空気の入れ換えや、カビの防止措置など専有部分の維持・管理のために必要な範囲で、専有部分に立ち入ることは許されると考えられています。

