建物区分所有法26 「区分所有権の競売の請求」
はじめて建物区分所有法入門(仮題) その26 植杉 伸介
3 区分所有権の競売の請求
(1) 請求の目的
使用禁止請求という手段をもってしても、共同生活の維持を図ることができない場合があります。
使用禁止は相当の期間だけ一時的に義務違反者を追い出す手段なので、期間経過後にまた義務違反行為を繰り返す場合は、最終的な解決を図ることができないからです。
そこで、義務違反者である区分所有者を最終的に排除する手段として、その義務違反者の区分所有権を競売にかけて、区分所有権を完全に奪ってしまう手段が認められています。
なお、競売の対象になるのは、区分所有権および敷地利用権です。区分所有権のみを競売にかけたのでは、区分所有権と敷地利用権が分離されてしまうからです。
競売請求は、次の条件を満たしている場合でないと認められません。
① 義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
② 行為の停止等の請求および専有部分の使用禁止請求では、共同生活上の障害を除去して、共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
この2つの条件は、使用禁止請求の場合とほとんど同じです。違っているのは、②の条件において、行為の停止等の請求だけでなく、使用禁止請求の手段でも共同生活の維持を図ることが困難な場合でなければならない点です。
なお、この場合も、前提として、実際に行為の停止等の請求および使用禁止請求を試みることまでは要求されていません。
最初から行為の停止等の請求および使用禁止請求では実効性がないことが明白な場合は、いきなり競売請求を行うことができます。
(2)訴訟手続の要件
訴訟手続の要件は、すべて使用禁止請求の場合と同じです。
すなわち、競売請求は、必ず訴えをもって行わなければならず、その訴訟の提起には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要です。
そして、この決議の際には、当該区分所有者にあらかじめ弁明の機会を与えなければなりません。
また、管理組合法人では法人の名で理事が代表して訴訟を提起し、法人でない管理組合では原則として区分所有者全員が訴訟を提起するが、集会の決議(普通決議)により、管理者または特定の区分所有者を指定して、その者に訴訟追行させることもできる点なども同じです。
(3)競売手続
競売請求を認める判決を受けただけで、自動的に競売手続が始まるわけではありません。判決に基づいて、裁判所に競売の申立てをする必要があります。
この競売の申立ては、競売請求を認める判決が確定した日から6か月以内に行わなければなりません。
競売請求の対象となった区分所有者の地位を長期間不安定な状態にしておくのは適当でないからです。
競売では、だれでも買受人になることができるのが原則です。
しかし、この競売においては、当該区分所有者自身が買受人になることはできません。
義務違反者である区分所有者の区分所有権を奪おうとした目的が達成できないからです。
また、名義上は第三者が買受人になっていたとしても、義務違反者である区分所有者が買受代金を提供しているような場合は、第三者は一種のダミーであり、実質的な買受人は当該区分所有者といえます。
したがって、第三者が義務違反者である区分所有者の計算において買い受けることも許されません。

