建物区分所有法27 「占有者に対する引渡請求」
はじめて建物区分所有法入門(仮題) その27 植杉 伸介
4 占有者に対する引渡請求
(1)請求の目的
前述の通り、義務違反者が区分所有者である場合は、行為の停止等の請求・専有部分の使用禁止請求・区分所有権の競売請求という3つの手段が用意されています。
このうち使用禁止請求と競売請求は、義務違反者が区分所有者の場合にだけ認められる手段です。
賃借人等の占有者が義務違反行為をする場合も、行為の停止等の請求はできますが、違反行為を繰り返すような占有者に対しては効果が不十分です。
そこで、その占有者を排除するべく、賃貸借契約等を解除して、占有者に対して専有部分の引渡しを請求する手段が認められています。
所有者→行為の停止等の請求→専有部分の使用禁止請求→区分所有権の競売請求
占有者→行為の停止等の請求→占有者に対する引渡請求
占有者への引渡し請求は、次の条件を満たしている場合でないと認められません。
① 義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
② 行為の停止等の請求では、共同生活上の障害を除去して、共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
この2つの条件は、使用禁止請求の場合とまったく同じです。②の条件について、前提として、実際に行為の停止等の請求を試みることまでは要求されてない点も同じです。
(2)訴訟手続の要件
訴訟手続の要件も、すべて使用禁止請求の場合と同じです。
すなわち、引渡し請求は、必ず訴えをもって行わなければならず、その訴訟の提起には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要です。
そして、この決議の際には、当該占有者にあらかじめ弁明の機会を与えなければなりません。
また、管理組合法人では法人の名で理事が代表して訴訟を提起し、法人でない管理組合では原則として区分所有者全員が訴訟を提起するが、集会の決議(普通決議)により、管理者または特定の区分所有者を指定して、その者に訴訟追行させることもできる点なども同じです。
(3)引き渡された専有部分の再引渡し義務
引渡し請求が認められた場合、占有者は訴訟の原告(管理組合法人、管理者等)に対して、専有部分を引き渡します。
その専有部分の区分所有者に対する直接の引渡しは行いません。区分所有者は、自ら占有者に賃貸した者なので、賃料収入を失うことなどを嫌がって、占有者からの引渡しを受けず、占有者を排除するという目的を達成できないおそれがあるからです。
しかし、管理者等が占有者からの引渡しを受けて目的を達成できれば、その専有部分は区分所有者に返還すべきです。
それゆえ、引渡し請求を認める判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、その専有部分を区分所有者に引き渡さなければならないことになっています。

