建物区分所有法29「共用部分大規模滅失の復旧」
はじめて建物区分所有法入門(仮題) その29 植杉 伸介
2 共用部分の大規模滅失の復旧
(1)復旧の集会決議
建物の価格の2分の1を超える部分が滅失(大規模滅失)した場合は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で共用部分の復旧を決定する必要があります。
小規模滅失の場合と違って、各区分所有者が単独で復旧することはできません。
大規模滅失の場合は、復旧に多額の費用がかかるので、慎重な手続で判断すべきだからです。
そして、大規模滅失の場合の復旧決議が成立したときは、議事録にその決議についての各区分所有者の賛否を記載または記録しなければなりません。
通常は、普通決議事項はもちろんのこと特別決議事項であっても、議事録に各区分所有者の賛否まで記載または記録する必要はありません。
しかし、大規模滅失の復旧においては、後で述べる買取請求権との関係で決議への賛否が重要な意味を持ってくるので、特別に記載又は記録させることにしたのです。
(2)復旧に賛成しなかった区分所有者の買取請求権
①買取請求権
大規模滅失の場合は、復旧に相当の費用がかかるので、区分所有者の中には多額の出費をしてまで復旧したくないと考える人がいます。
しかし、復旧決議が成立した以上、復旧工事の費用は区分所有者全員が負担せざるを得ません。
そこで、復旧を望まない人のために、区分所有関係から離脱して、復旧の費用を負担せずにすむ方法が用意されています。
すなわち、復旧決議に賛成した区分所有者以外の区分所有者は、賛成した区分所有者に対して建物および敷地利用権を時価で買い取ることを請求できるのです。
この買取請求権が行使されると、相手方の承諾がなくても、直ちに当事者間に売買契約成立の効果が生じます。
ただし、すぐに代金を支払うことが困難な場合には、相手方からの請求により、裁判所は相当の期限を許与することができます。
②買取指定者の指定
買取費用を区分所有者が負担するのは大変なので、大規模滅失の復旧決議の日から2週間以内に、決議賛成者が全員で合意すれば、買取請求が行われた場合に買い取る者を指定できます。
外部のデベロッパー(開発業者)などに買取を担当させることができるのです。
そして、その買取指定者自身が、買取指定された旨を決議に賛成しなかった区分所有者に書面で通知したときは、通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してしか買取請求ができなくなります。
なお、買取指定者を指定する前に買取請求権を行使されたら困るので、買取請求権は、大規模滅失の復旧決議の日から2週間経過しないと行使できないことになっています。
もっとも、買取資金を十分に持たない買取指定者が定められた場合、買取請求権を行使した者が不利益を受けるおそれがあります。
そこで、買取指定者が買取代金の全部または一部を弁済しないときは、決議賛成者は、連帯してその債務の弁済をする義務を負います。
ただし、決議賛成者が、買取指定者には債務を弁済する資力があり、かつ、強制執行なども容易にできることを証明したときは、その弁済義務を免れます。
③買取請求権行使の時期的制限
買取請求をするかどうかは、決議に賛成しなかった者の自由なので、復旧工事が終了してかなりの期間が経過した後に買取請求が行われる可能性もあります。
これでは、権利関係がいつまでも安定せず不都合なので、買取請求に時期的制限を設けることができます。
すなわち、復旧決議のあった日から2週間経過したときは、集会を招集した者は、決議に賛成しなかった区分所有者に対し、4カ月以上の期間を定めて買取請求をするか否かを書面により催告できます。
この催告期間が経過したときは、もはや買取請求ができなくなります。
④買取費用の分担
買取指定者が指定されていない場合、決議に賛成した区分所有者のだれに対して、買取請求権が行使されるか分かりません。
運悪く買取請求の相手方にされた区分所有者だけが買取費用を負担して、他の区分所有者はまったく負担しないというのは不公平です。
そこで、買取請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から2カ月以内に、他の決議賛成者の全部または一部に対し、その建物および敷地利用権を共用部分の持分割合に応じて時価で買い取るべきことを請求することができます。
(3)決議がされない場合の買取請求権
大規模滅失の場合には、上記の買取請求権のほか、もう一つ別の買取請求権があります。
大規模滅失があったにもかかわらず、4分の3以上の賛成を得られないため、復旧決議が行われない場合があります。
この状況は、復旧を望む区分所有者と望まない区分所有者の利害が対立しあったままの状態といってよいでしょう。これでは、いつまでたっても問題が解決しません。
そこで、大規模滅失があった日から6か月以内に、復旧決議も建替え決議もなされないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物および敷地利用権を時価で買い取るべきことを請求できることになっています。
この場合も、すぐに代金を支払うことが困難なときは、相手方からの請求により、裁判所は相当の期限を許与することができます。
この買取請求は、通常、復旧を望まない区分所有者から復旧を望む区分所有者に対して行われます。
その結果、復旧を望まない者は区分所有関係から離脱できるとともに、復旧を望む者の議決権割合が増えるので、いずれ復旧決議が可能な状態になることが期待されます。



