建物区分所有法31 建替え決議後の問題
はじめて建物区分所有法入門(仮題) その31 植杉 伸介
2 建替え決議後の問題
(1)建替え参加の催告
建替え決議があったときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかった区分所有者(その承継人を含む)に対し、建替えに参加するか否かを回答するよう書面で催告しなければなりません。
決議に加わらなかった区分所有者の参加・不参加の意思を確認するとともに、決議に反対した区分所有者にも改めて参加の機会を与えるためです。
催告を受けた区分所有者は、催告を受けた日から2か月以内に参加するかどうかの回答をしなければなりません。期間内に回答しなかったときは、不参加とみなされます。
もともと決議に賛成していない者なので、返事がないということは不参加と考えるのが自然だからです。
この催告手続の結果、区分所有者が建替え参加者と建替え不参加者に明確に別れることになります。
(2)売渡請求権
建替え決議の効力は、建替えに参加しない者も含めて区分所有者全員に及びます。しかし、建物の取壊しおよび建物の再建をすすめるためには、最終的に建替えに参加しない者がいない状態にすべきです。
そこで、建替え参加者と不参加者が確定した時点で、建替え参加者(建替え決議に賛成した者および参加の回答をした者)は、不参加者に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができることとしました。
この売渡請求権を行使することにより、建替え不参加者が排除され、全員が建替え参加者という状態になります。
ここでは、大規模滅失の復旧決議の場合は「買取」請求であったのに対し、建替えの場合は「売渡」請求であることに注意してください。
建替えの場合、まず現在の建物を取り壊した上で、新しい建物を建てます。その取壊し工事を行う際に、建替えに参加しない区分所有者の専有部分が存在し、そこに人が住んでいたら困ります。
他人の財産を破壊するばかりでなく、居住者の生命にも関わるからです。
したがって、取壊しの時点では、全員が建替えに参加する状態になっていなければなりません。
ところが、買取請求権だと、不参加者のほうから請求してくれないことには、いつまでたっても不参加者が残ったままです。
そこで、逆に参加者側のほうから不参加者の区分所有権を強制的に買い上げることができるように、売渡請求を認めることにしたのです。
これに対し復旧の場合は、共用部分を復旧するだけですから、復旧に賛成しない人がいても工事は可能です。
また、復旧に賛成していなくても、復旧工事が行われれば、その者も費用を分担する必要があります。
今後も区分所有者として復旧された共用部分を利用するのに、決議に賛成しなかったからといって費用負担を拒否することはできないからです。
それゆえ、復旧に賛成していない人を強制的に排除する必要はなく、費用を負担したくない人が買取請求をして、区分所有関係から離脱する道さえ確保しておけば十分なのです。
売渡請求権が行使され、その意思が相手方に到達すると、当事者間に売買契約が成立したのと同一の効果が生じます。
したがって、相手方には直ちに専有部分を明け渡す義務が生じます。
ただし、建物の明渡しにより、その者の生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、明渡しに相当の期限を許与することができます。
なお、この売渡請求権は、建替え参加の催告の回答期限である催告を受けた日から2か月を経過した時から行使できますが、その回答期限満了の日から2か月経過すると、行使できなくなります。
(3)買受指定者
上に述べた売渡請求権は、建替えに参加する旨を回答した区分所有者だけでなく、建替え参加者全員の合意により買受けができる者として指定された者(買受指定者)が行使することもできます。
この買受指定者の制度は、建替え参加者だけで不参加者の権利を買い取ることが資力の点で難しい場合に、資力のある不動産業者等を買受指定者にすることを認めるものです。このような方法をとれば、資力が不十分な場合でも、建替えを実現することが可能となります。
(4)再売渡請求権
建替え決議の日から2年以内に、正当な理由なく建替えのための建物の取壊し工事に着手しない場合は、売渡請求権の行使により区分所有権および敷地利用権を売り渡した者は、前記2年の期間満了の日から6か月以内に、その区分所有権を有する者に対し、買主が支払った代金を提供して、その権利を売り渡すよう請求すること(買い戻すこと)ができます。
建替え不参加者から強制的に区分所有権および敷地利用権を買い上げること(売渡請求権)を認めたのは、建替えを実行できるようにするためです。
それなのに、いつまでも建替えを実行しないのでは、その区分所有者の利益が不当に害されるからです。
(5)建替えに関する合意の擬制
建替え決議に賛成した区分所有者、建替えに参加する旨の回答をした区分所有者、および売渡請求により区分所有権を買い受けた買受指定者ならびにこれらの者の承継人は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなされます。
理論的には、建替え事業は、建替え参加者の集団が行います。この建替え参加者の集団の形成を法律的に明確にするため、建替えの合意が集団的に成立したみなすことにしたのです。
この合意により、建替え参加者間に一種の組合契約が成立し、互いに建替え決議の内容による建替えを行う義務を負うことになります。



