建物区分所有法34 一括建替え決議
はじめて建物区分所有法入門 その34
4 団地内の区分所有建物の一括建替え決議
住宅新報社講師 植杉 伸介
(1)一括建替え決議の要件
団地内の区分所有建物をそれぞれの棟ごとの判断によって建て替えることもできますが、団地内の区分所有建物を全部まとめて一斉に建て替えることもできます。
ただし、この一括建替え決議は、次の条件を満たしている場合でなければ認められません。
① 団地内の建物の全部が区分所有建物であること(戸建ての建物を含んで団地関係が成立している場合は、一括建替え決議はできない)
② 敷地が団地内建物の区分所有者の共有に属していること
③ 団地管理規約が定められていること
団地内の建物の全部が区分所有建物でなければならないので、戸建ての建物を含んで団地関係が成立している場合は、一括建替え決議はできません。
また、敷地が団地内建物の区分所有者の共有に属していなければならないので、附属施設のみを共有することによって団地関係が成立している場合は、一括建替え決議をすることができません。
以上の条件を満たしたうえで、団地管理組合の集会で、団地内の全区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数の賛成を得れば、団地内建物を一括して全部取り壊して建物を建て替える旨の決議をすることができます。
ただし、全体として5分の4以上の賛成があったとしても、各棟ごとの区分所有者の意思を無視することはできないので、一括建替え決議が成立するためには、各棟ごとに、それぞれの区分所有者の3分の2以上の者であって議決権の合計の3分の2以上の議決権を有するものが、その一括建替え決議に賛成していることが条件となります。
つまり、一括建替え決議の成立要件として、団地全体で5分の4以上の賛成があるだけではダメで、その団地管理組合における一括建替え決議において、各棟の区分所有者はどのように議決権行使をしたかをチェックし、各棟ごとに見て3分の2以上が賛成していることが必要とされているのです。
したがって、一括建替えを行う場合、各棟で集会を開いて決議をする必要はありません。
なお、一括建替え決議において、団地全体における「5分の4」の要件を計算する場合の「議決権」は、敷地の共有持分の割合によりますが、各棟ごとにおける「3分の2」の要件を計算する場合の「議決権」は、その棟の規約に別段の定めがない限り、棟の共用部分に対する持分の割合によります。
(2)一括建替え決議に定めるべき事項
一括建替え決議においては、
①再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要、
②新たに建築する建物(再建団地内建物)の設計の概要、
③団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額、
④③の費用の分担に関する事項、
⑤再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項、
…を必ず定めなければなりません。
5 罰則
(1)管理者等の義務違反行為に対する過料
区分所有法上の罰則は、すべて「過料」です。罰金や懲役などの罰則はありません。
過料とは、国家によって一定の秩序違反行為に対して科される金銭罰をいいます。
この過料の性質論を気にする必要はありませんが、いわゆる刑罰である罰金や科料とは区別されることだけは知っておいてください。特に「科料」はまぎらわしいので要注意です。
(2)対象となる義務違反行為
区分所有法上の義務違反行為のすべてに対して過料の罰則が科されるわけではありません。
一定の重要な義務についてのみ罰則が科されます。
管理者、理事、規約保管者、議長、清算人が次のような義務違反行為をしたときは、20万円以下の過料に処せられます。
① 規約・集会の議事録・書面または電磁的方法による決議の書面または電磁的記録の保管義務違反(規約保管者は除く)
② 規約・集会の議事録・書面または電磁的方法による決議の書面または電磁的記録の閲覧拒絶
③ 集会の議事録の作成義務違反)
④ 事務報告義務違反
⑤ 管理組合法人の登記義務を懈怠
⑥ 管理組合法人の財産目録作成義務違反
⑦ 理事または監事の選任手続懈怠
⑧ 清算の場合の公告義務違反
⑨ 清算中の破産手続開始の申立て懈怠
⑩ 清算人の検査妨害
これらの罰則をすべて暗記する必要はありません。試験対策上重要なのは、罰則がありそうだけどない場合を覚えることです。
まず注意すべきは、規約の保管・閲覧義務に違反すると罰則がありますが、保管場所を建物内の見やすい場所に掲示すべき義務に違反しても罰則がないことです。
また、管理者が定められていない場合は、規約または集会の決議で保管者として定められた者が、規約・集会の議事録・書面または電磁的方法による決議の書面または電磁的記録を保管する義務を負います。
しかし、この保管者が規約等の保管義務に違反しても、罰則は科されません(管理者が違反すると20万円以下の過料に処せられます)。
もっとも、この保管者も、規約等の閲覧を正当な理由なく拒絶した場合には、20万円以下の過料に処せられます。
(3)名称使用に対する過料
上記の罰則は、すべて20万円以下の過料でしたが、10万円以下の過料という場合が1つだけあります。
すなわち、管理組合法人でない組合が、管理組合法人の名称を使用したときは、10万円以下の過料に処せられます。
10万円以下の過料がこれ1つだということは是非覚えておいてください。これ以外で10万円以下の過料とする問題が出題されたら、それは見た瞬間間違いと判断することができます。
また、区分所有法上の罰則は、20万円の過料と10万円の過料だけということも覚えておきましょう。



