5か月短期攻略法 3 「時効中断」 小川多聞
ウィークポイント超速整理その
3 時効中断
時効中断事由には,権利行使行為と債務承認行為の2種がある。
時効中断事由
●権利行使行為
①請求
②差押え・仮差押え・仮処分
●債務承認行為
①承認
時効中断に関しては,試験によく出るのですが,なにが中断事由に当たるかがよく分からないことが多いといえましょう。
ここでは,その点を整理して,かつ,判例も紹介しましょう。
(1)時効中断事由
民法は,時効中断事由を大きく2つに分けています(民法147条)。
● 権利行使による時効中断
「請求」には,
①「裁判上の請求」(149条)
②「支払督促」(150条)
③「和解および調停の申立て」(151条)
④「破産手続参加」(152条)
⑤「催告」(153条)
が含まれます。
「差押え,仮差押え,仮処分」も権利行使型の時効中断事由です(154条,155条)。
● 債務承認による時効中断
これは,民法第156条の「承認」だけです。
【判例研究】
①(時効の中断事由に当たる)不動産競売手続において執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求は,差押えに準ずるものとして,配当要求に係る債権につき消滅時効を中断する効力を生ずると解すべきである(最判平11・4・27)。
②(時効の中断事由に当たらない)登記を経た抵当権者が,第三者による担保権の実行としての競売手続において,債権の届出をし,その一部に対する配当を受けたとしても,右配当を受けたことは,債権の残部について,差押えその他の消滅時効の中断事由に該当しない(最判平8・3・28)。
まことに微妙な判例ですが,「執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求」に積極的な権利行使の意思を認めて,時効中断の効力を認めたものと考えていいでしょう。
【時効の効力が及ぶ者の範囲】
時効の中断は,その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ,その効力を有する(148条)。
【判例研究】
①主たる債務についての連帯保証債務を担保するために抵当権を設定した物上保証人に対して,債権者が競売を申し立て,その手続が進行すること(主たる債務者には通知されていない)は,主たる債務の消滅時効の中断事由に該当しない(最判平8・9・27)。
②物上保証人が,債務者の承認により生じた時効中断の効力を否定することはできない(最判平7・3・10)。
②の判例は,物上保証の附従性を強調するものです。
【裁判上の請求】
裁判上の請求は,訴えの却下又は取下げの場合には,時効の中断の効力を生じない(149条)。
この条文は通常のテキストにも出ていますので,解説の必要はないでしょう。
【判例研究】
被担保債権の債務者を原告とする留置権の抗弁には,訴えの提起に準ずる時効中断の効力はないが,催告としての時効中断の効力が訴訟中継続する(最判昭38・10・30)。
【支払督促】
支払督促は,債権者が民事訴訟法第392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは,時効の中断の効力を生じない(150条)。
「支払督促」も,積極的な権利行使として,裁判上の請求に準じるものといえます。
【和解および調停の申立て】
和解の申立て又は民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立ては,相手方が出頭せず,又は和解若しくは調停が調わないときは,1箇月以内に訴えを提起しなければ,時効の中断の効力を生じない(151条)。
これも請求の一種です。
【破産手続参加】
破産手続参加,再生手続参加又は更生手続参加は,債権者がその届出を取り下げ,又はその届出が却下されたときは,時効の中断の効力を生じない(152条)。
破産手続という強力な法定手続の場合は,それに参加するだけで時効の中断が認められます。
【催告】
催告は,6箇月以内に,裁判上の請求,支払督促の申立て,和解の申立て,民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て,破産手続参加,再生手続参加,更生手続参加,差押え,仮差押え又は仮処分をしなければ,時効の中断の効力を生じない(153条)。
ここまでが,広い意味での「請求」に分類できます。
本稿では,条文はそのまま掲載していますので,通常のテキストより長くなっているかもしれません。
通常のテキストでは,「裁判上の請求等」と文言を省略し,「支払督促の申立て」以下は省略しているかもしれません。
【差押え,仮差押え,仮処分】
差押え,仮差押え及び仮処分は,権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは,時効の中断の効力を生じない(154条)。
差押え,仮差押え及び仮処分は,時効の利益を受ける者に対してしないときは,その者に通知をした後でなければ,時効の中断の効力を生じない(155条)。
やはり,通常のテキストでは,上記条文は省略しているものが多いでしょう。
【承認】
時効の中断の効力を生ずべき承認をするには,相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない(156条)。
「承認」は,それにより権利の存在が明確になることおよび,承認により権利者が権利行使を差し控えた場合に時効の完成を認めることは不当であることから,中断事由とされています。
具体的な「承認」の例としては,弁済の支払猶予の懇請,延期証の差入れ,担保の供与,利息の支払等があります。
また,一部の支払は,全部の承認となりますが,可分債務についての一部の弁済は必ずしも全部についての承認とはならないという判例もあります。
なお,被保佐人は有効に「承認」できるが,未成年者および成年被後見人は有効に「承認」できない,とされています(取り消しうる承認となる)。
(2)時効中断の効力
【中断後の時効の進行】
①中断した時効は,その中断の事由が終了した時から,新たにその進行を始める。@②裁判上の請求によって中断した時効は,裁判が確定した時から,新たにその進行を始める(157条)。



