5か月短期攻略法 10 「相 殺」 小川多聞
ウィークポイント超速整理その10
10 相 殺
相殺されたら困る債権は相殺できない。
相殺は,できるか否かを頭の中で考えても,なかなか整理できません。大ざっぱに,「相殺されたら困る場合は相殺できない」と考えましょう。
(1)相殺の要件
相殺は,①当事者に対立した債権が存在すること,②その債権が同種の債権であること,③双方の債権が弁済期にあること,④相殺が許されるものであること,が必要です。
● 対立する債権の存在
AがBに100万円の貸金債権を有し,BがAに50万円の代金債権を有しているような場合に相殺が可能です。
しかし,自働債権(相殺するほうの債権)が時効により消滅している場合は,時効完成前に相殺できる状態にあったのであれば,相殺することができます(民法508条)。
相殺できるようになったことにより,当然消滅したと考える当事者を保護するためです。
● 同種の目的を有すること
AがBに100万円の金銭債権を有し,BがAに対してB家の田植えを3日間手伝ってもらう債権を有している場合などは,相殺しようがありません。
● 双方の債権が弁済期にあること
この要件に関しては,自働債権が弁済期にあれば,受働債権(相殺されるほうの債権)は弁済期になくても相殺できます。
100万円の貸金債権(弁済期5月1日)
A ------------------------------------------------------------→ B
B ←------------------------------------------------------------ A
50万円の代金債権(弁済期10月1日)
この場合,Aは自己の有する100万円の貸金債権(自働債権)で,5月1日に相殺することができます。
5月1日には,Bのほうからは相殺できません。そうでないとAは,10月1日まで弁済しなくてよいはずなのに,無理やり弁済させられることになり困ってしまうからです。
(2)相殺禁止
次の場合は相殺できません。
①受働債権が不法行為による場合
たとえば,Aの債権が100万円の貸金債権で,Bの債権が,Aの車にひかれて骨折したことによる損害賠償債権のような場合です。
100万円の貸金債権(自働債権)
A ------------------------------------------------------------→ B
B ←------------------------------------------------------------ A
50万円の損害賠償債権(受働債権)
この場合に,Aからの相殺を認めると,Bは病院に通うお金がなくなって困ってしまうからです。Bからの相殺(50万円の損害賠償債権が自働債権となる)は,認められています。
②受働債権が差押禁止債権である場合
上記のBの債権が恩給債権などの場合です。
100万円の貸金債権(自働債権)
A ------------------------------------------------------------→ B
B ←------------------------------------------------------------ A
50万円の恩給債権(受働債権)
差押えを禁止されている債権(扶養請求権,恩給債権等)は,債権者の命を支える債権ですので,それが相殺されてなくなると,餓死するしかなく困ってしまうからです。
③自働債権に抗弁権のついている場合
たとえば,Aの債権が中古車を売った代金債権の場合です(同時履行の抗弁権つき)。
100万円の代金債権(自働債権、抗弁権付)
A ------------------------------------------------------------→ B
B ←------------------------------------------------------------ A
50万円の貸金債権(受働債権)
Bとしては車を引き渡してもらうまでは代金を払わなくてよいはずなのに,相殺されては車を引き渡してもらえず,困ってしまうからです。
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