5か月短期攻略法11「同時履行の抗弁権」小川多聞
ウィークポイント超速整理その11
11 同時履行の抗弁権
いったん履行の提供をしたとしても,同時履行の抗弁権は消滅しない。
たとえば,AがBに建物を売却した場合,履行期に,BがAのところに行って,代金を提供し登記を移転してくれと言ったところ,Aが理由なく移転登記を拒否したとしましょう。
後日,Bが,代金を持たずに,Aに対して登記の移転を請求したが,このときにAは代金の支払と登記の移転の同時履行を主張できるでしょうか。判例は以下のように述べています。
双務契約の当事者の一方は,相手方の履行の提供があっても,その提供が継続されないかぎり,同時履行の抗弁権を失うものではない(最判昭34・5・14)。
したがって,Aの主張は認められます。
Bとしては,いったん代金を提供しているので,この結果は不当のように見えます。しかし,Aの登記の先履行を認めると,今度は,Aの代金受取りが困難となるおそれがありますので,学説もこの結論に賛成しています。
Aの不当な履行の遅滞は,損害賠償請求の場面で解決するべきことです。
なお,Bが裁判所に訴えた場合についても,裁判所はBの一方的な勝訴判決ではなく,「引換給付判決」(AはBからの代金支払と引換えに登記を移転せよという判決)を出すことになります。
【注意】 なお,契約を解除する場合は,いったん履行の提供をすれば,あとは提供しなくても催告し解除できますので,注意してください。
【同時履行の抗弁権の認められる場合】
同時履行の場面
①登記移転義務と代金支払義務 ②弁済と受取証書(領収書)の交付義務 ③請負人の目的物引渡義務と報酬支払義務 ④取消しによる原状回復義務
同時履行でない場面
①敷金返還義務と目的物の明渡義務@②債務の弁済と抵当権設定登記の抹消@③造作買取請求権行使の場合の造作代金支払義務と建物の引渡義務@④弁済と債権証書返還義務
予想問題
AはBとの間で,土地の売買契約を締結し,Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行させることとした。
決済約定日に,Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが,Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので,Aは履行を拒否した。
この場合に関する次の記述のうち,正しいものには○,誤っているものには×をつけなさい。
1 Bは,履行遅滞に陥り,遅延損害金支払債務を負う。
2 Aは,いったん履行の提供をしているので,これを継続しなくても,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
3 Aは,いったん履行の提供をしているので,Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合,引換給付判決ではなく,無条件の給付判決がなされる。
解答・解説
1 Aが履行の提供をした時点で,いったん同時履行の抗弁権は消滅するので,Bは,履行遅滞となる。〇
2 契約解除の場合は,提供の継続は不要。〇
3 引換給付判決である。×
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