直前予想問題と解説 権利関係3 植杉伸介
②抵当権設定登記後に設定された賃借権
【問2】 次の各問の正誤を答えなさい。
1 一定の短期間の賃貸借であれば,抵当権の設定登記後に設定された場合でも,抵当権者にその賃借権を対抗できる。
2 抵当権の設定登記後に設定された賃借権であっても,賃借権の登記前に登記した抵当権者のすべてが同意し,かつ,その同意の登記をしたときは,その賃借権を抵当権者に対抗することができる。
3 抵当権者に対抗できない賃貸借であっても,競売手続開始前から抵当権の目的物である不動産を使用又は収益していた賃借人は,競売で買受人が買い受けた時より6か月間は,目的物を買受人に引き渡さなくてもよい。
.【解答・解説】
1 誤り。
短期間の賃貸借であっても,抵当権の設定登記後に設定された賃借権は,抵当権者に対抗できません。抵当権を設定した時点では,賃借権が設定されていないので,抵当権者は賃借権がないものとして目的物を評価しています。
それなのに,その後に設定された賃借権がそのまま認められたのでは,賃借権が付着している分,目的物の競売価格が低下し,抵当権者が不利益を受けるからです。
〈改正のポイント・注意点〉
抵当権と賃借権との関係に関する改正は,抵当権消滅請求と同じく平成15年に行われています(施行は平成16年4月1日から)。
改正前は,宅地については5年以下,建物については3年以下の短期間の賃貸借のみ,例外的に抵当権設定登記後に設定された場合でも抵当権に対抗できるものとされていました(短期賃貸借の保護)。しかし,この制度は,抵当権を妨害する目的で悪用されることも多かったため,法改正により廃止されたのです。
2 正しい。
本問のとおりです。抵当権の登記の後の賃借権が否定されるのは,抵当権者を保護するためです。
そうすると,賃借権の登記前に登記した抵当権者のすべてが同意し,かつ,その同意の登記をしたのであれば,抵当権設定登記後の賃借権であっても,抵当権者への対抗を認めてもよいことになるからです。
〈改正のポイント・注意点〉
前述の短期賃貸借制度が廃止されたことに伴って,新たに定められた規定です。抵当権の設定登記後に設定された賃借権であっても,その賃貸借を存続させたほうが抵当権者にとっても都合がいい場合があります。
賃貸借を存続させて,債務者に賃料収入を得させたほうが債務の弁済が安定して行われるような場合です。そこで,抵当権設定登記後の賃借権についても,抵当権者に対抗できるかたちにできる方法を定めることにしたのです。
3 誤り。
6か月間の引渡しの猶予が認められるのは,目的物が「建物」の場合だけです(民法395条1項)。問題文では「不動産」としており,土地も含む表現となっているので,誤りです。
〈改正のポイント・注意点〉
短期賃貸借制度を廃止した代わりに,導入された制度です。抵当権設定登記後の賃借権が最終的に否定されるのは仕方ないとしても,現実に建物を使用・収益していた者にとって,競売後直ちに退去・明渡しをするのは困難な場合があります。そこで,建物に限って,一定期間の引渡しの猶予を認めることにしたのです。
③一括競売
【問3】 次の問の正誤を答えなさい。
1 A所有の更地にBのために抵当権を設定した後,Aがその土地をCに売却し,Cがその土地の上に建物を築造した場合,Bは,土地とともに建物を競売にかけることができる。
【解答・解説】
1 正しい。更地に抵当権を設定した後,抵当地上に建物が築造された場合,抵当権者は,土地とともに建物も競売にかけることができます(民法389条1項)。これを一括競売といいますが,一括競売は,抵当権設定者自身が建物を築造した場合だけでなく,本問のように,抵当権設定者以外の者が建物を築造した場合にも認められます。
〈改正のポイント・注意点〉
法改正以前は,抵当権設定者自身が建物を築造した場合にしか,一括競売が認められていませんでした。しかし,建物を取り壊すことを防ぐという一括競売制度の目的は,抵当権設定者以外の者が建物を築造した場合にも当てはまるので,これも含めるように法改正したのです。
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