住宅新報社・季刊「不動産受験新報」2010年夏号
         (6/1日発売 定価1155円)

⑼ 自ら売主となる新築住宅の売買契約の新たな締結の制限★★★

 宅建業者は,住宅販売瑕疵担保保証金の供託をし,かつ,保証金の供託等の届出をしなければ,当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後に,新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結することはできません(法13条)。

要するに,基準日前の半年間に供託していない新築住宅(保険にも加入していない)がある場合は,基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後に,新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できないということです。

 ただし,当該基準日後に基準額に不足する額の供託をして,かつ,その供託について,免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事の確認を受けたときは,その確認を受けた日以後は,新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結することができます。


⑽ 住宅販売瑕疵担保保証金の還付★★★

 引渡しから10年間に,隠れた瑕疵によって生じた損害を受けた新築住宅の買主※8は,その損害賠償請求権に関し,住宅販売瑕疵担保保証金について,他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有し,その権利の実行のため,供託所に対して,住宅販売瑕疵担保保証金の還付を請求することができます(法14条1項・2項)。

※8 還付請求ができるのは新築住宅の買主だけで,買主からその住宅を譲り受けた転得者は還付請求をすることはできない。

(7) 住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結(保険への加入)★★★

 宅建業者が住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしなくてもよいのは,その新築住宅について国土交通大臣の指定を受けた保険法人(住宅瑕疵担保責任保険法人)と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結※7し,買主に対して,保険証券またはこれに代わるべき書面を交付した場合です。

 保険契約を締結していても,買主に対して,保険証券またはこれに代わるべき書面を交付していなければ,住宅販売瑕疵担保保証金を供託しなければなりません。

※7 工事中に保険法人の検査に合格しなければ保険契約を締結できないので,工事開始までに保険の加入申込みをしていなければならない。


 


⑹ 住宅販売瑕疵担保保証金の供託★★★

 新築住宅を販売した宅建業者は,住宅販売瑕疵担保保証金(以下,この項で「保証金」)については,いつでも,基準日(3/31と9/30)までの過去10年間に引き渡した新築住宅の戸数※5に応じた保証金※6を供託していなければなりません。

このため,半年ごとの基準日までに,その半年の間に引き渡した新築住宅の供給実績に対応した保証金をまとめて,供託することになります(法11条1項・2項)。

※5 《経過措置》現在は施行されてまだ10年間経過していないので,施行日の平成21年10月1日以降当該基準日までの戸数となる。なお,住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し,保険証券またはこれに代わるべき書面を買主に交付した新築住宅の戸数は除かれる(法11条2項)。

※6 保証金は,販売新築住宅の合計戸数の区分に応じて履行確保法の別表で定められる金額の範囲内で,政令で定めるところにより算定する額《基準額》以上の額でなければならない(法11条2項)。基準額については,政令で算出する数式が決められている(施行令4条,別表)。上限は120億円である。

 

3 不動産取得税の課税標準を2分の1とする住宅用土地の特例中の新築用土地

 土地を取得してから住宅を新築する場合,不動産取得税の住宅用土地の軽減を受ける場合には,原則として土地取得から2年以内に住宅を新築する必要がありますが,この2年以内を3年以内に緩和する特例が平成22年3月31日までの土地取得については認められていました。

この特例が平成24年3月31日までの土地取得まで適用期限が延長されました。

4 新築住宅に係る固定資産税の2分の1減額の特例
 平成24年3月31日まで延長されました。

② 宅建業者が住宅販売瑕疵担保責任保険に加入している場合

 宅建業者は,住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結した場合,保険証券またはこれに代わるべき書面を買主に交付しなければなりません(法11条2項かっこ書)。

 この場合も,宅建業法での35条の重要事項の説明,37条書面の記載義務があります。

重要事項説明
瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要(宅建業法35条1項13号,施行規則16条の4の2第1号)
⇒少なくとも,当該保険を行う機関の名称または商号,保険期間,保険金額および保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲について説明

(4) 従来からの特例の延長
 以下は単なる延長のため特例の概要の説明。

1 居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除
 居住用財産を買い換えるに当たり譲渡損失が発生した場合には,その譲渡損失を他の所得と損益通算でき,損失を引ききれなかった場合には,翌年以降最長3年繰越控除できる特例の適用期限が平成23年12月31日まで2年間延長されました。

2 長期優良住宅の特例
 平成20年度の税制改正で長期優良住宅(いわゆる200年住宅)の普及促進に関する法律が制定され,平成21年6月4日に施行されたことに伴い,長期優良住宅の登録免許税については,所有権保存登記,所有権移転登記ともに0.1%の軽減税率の適用が,また不動産取得税については,1,300万円を控除する特例が共に平成22年3月31日まで認められていました。

 さらに,固定資産税について新築住宅に関して5年または7年(地上3階以上の中高層耐火建築物),年間にわたり2分の1を減額する特例が,これも平成22年3月31日まで認められていました。これらの特例の適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されました。


 

⑸ 資力確保措置についての買主への告知義務★★★
 宅建業者に資力確保の措置が義務付けられているとはいえ,買主が資力確保の措置の内容を知らなければ,履行確保法で買主は権利の行使のしようがありません。

買主は,住宅販売瑕疵担保保証金の還付請求をすることになるのか,住宅瑕疵担保責任保険の支払請求をすることになるのか,あらかじめ知っておく必要があります。そのため,履行確保法では,宅建業者に書面を交付しての資力確保の措置についての告知義務を課すとともに,宅建業法でも,35条の重要事項,37条書面の記載事項としています。 

① 宅建業者が住宅販売瑕疵担保保証金を供託している場合
 供託宅地建物取引業者※3は,自ら売主となる新築住宅の買主に対し,当該新築住宅の売買契約を締結するまでに,その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項※4について,これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければなりません(法15条)。

 また,宅建業法でも,これについては35条の重要事項として説明し,37条書面に記載しなければなりません。

 

⑶ 居住財産の買換えの特例の適用制限と期限延長

 一定の居住用財産を買換えた場合には,売却した居住用財産の取得価額が引き継がれることにより,売却した居住用財産の譲渡価額が購入した居住用財産の取得価額以下であれば,課税が繰り延べられ,取得価額を譲渡価額が超えていれば,その差額についてのみ課税される特例が平成21年12月31日まで認められていました。

今回,その適用に際して居住用財産の譲渡価額は2億円を上限とするとの制約を付加したうえ,平成23年12月31日までの譲渡までとして2年間,特例が延長されました。 

(2) 小規模宅地等の相続税課税計算の特例の一部廃止

 居住用や事業用の小規模宅地については,残された相続人による,相続税の支払のための宅地売却により,これまでの住居に住めなくなったり,そこで行われてきた事業を断念せざるをえなくなったりするのをさけるため,一定面積まで相続税の課税の基礎となる評価額を,相続人が相続税の申告期限までに引き続き事業または居住を継続していれば80%,仮に相続人が引き続き事業または居住を継続していなかった場合でも,50%減額する特例が設けられていました。

 しかし,平成22年4月1日以降の相続については,相続人が相続税の申告期限までに引き続き事業または居住を継続しなかった場合の50%の減額の特例は廃止され,引き続き事業または居住を継続している場合の80%の減額の特例のみになりました。
 

⑶ 隠れた瑕疵の対象部位★★★

 履行確保法で資力確保措置が義務付けられる瑕疵とは,住宅品確法の規定での瑕疵をいい,住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵(住宅のうち構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの隠れた瑕疵〈構造耐力または雨水の浸入に影響のないものを除く〉)をいいます(法2条4項,住宅品確法94条1項,95条1項)。

⑷ 特定住宅瑕疵担保責任★★★
 「特定住宅瑕疵担保責任」とは,住宅品確法の規定による瑕疵担保責任をいいます(法2条4項,住宅品確法94条1項,95条1項)。

 住宅品確法の規定による瑕疵担保責任は,民法の瑕疵担保責任(損害賠償のみ)とは異なり,買主は,契約解除(契約の目的を達成できない場合),損害賠償請求だけでなく,瑕疵修補の請求もすることができます。
 
⑵ 新築住宅の定義★★★
 宅建業者が資力確保措置をしなければならない新築住宅※1とは,新たに建設された住宅(建設工事完了の日から起算して1年を経過していないもの)で,かつ,まだ人の居住の用に供したことのないものをいいます(法2条1項,住宅の品質確保の促進等に関する法律〈以下,「住宅品確法」〉2条2項)。

平成21年10月1日以降に引き渡された新築住宅から対象になります。

 ここで,注意したいのは,新築住宅であるかどうかは売買契約締結時点で判断されるということです。

したがって,引き渡したのが建設工事完了の日から起算して1年を経過していても,売買契約締結時点で,建設工事完了の日から起算して1年を経過していなければ(かつ,人の居住の用に供したことがなければ),新築住宅に該当するということです。

2―個別改正の内容
⑴ 贈与税の非課税限度額の拡充
 従来より父母からの住宅取得資金等の贈与については,相続時精算課税制度の特例が設けられ,一般的非課税枠2,500万円の上に,さらに1,000万円の非課税枠を上乗せできたのですが,そもそも贈与税について110万円の非課税枠の設けられている通常の暦年課税と異なる相続時精算課税制度による贈与税の課税をあえて選択する者が多くなく,さほど活用されなかったという経緯があります。

 そこで,若年者の住宅取得をより促進するため,平成21年6月より父母等直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合,通常の贈与税(暦年課税)か相続時精算課税かにかかわらず,通常の非課税枠に加え500万円の非課税枠の特例を設けました。

 今回の改正では,住宅取得資金等贈与があった場合の贈与税について,相続時精算課税制度を選択した場合の1,000万円の非課税枠の上乗せの特例が,平成21年12月31日で適用期限が終了したことに伴い,これに代わり,さらに贈与税について暦年課税であろうと,相続時精算課税制度であろうと,若年者の住宅取得をより促進しようとする趣旨から,平成22年中は1,500万円,平成23年中は1,000万円の非課税枠が特例により通常の非課税枠に加えて認められるようになりました。

 ただし贈与を受ける者のその年の合計所得が2,000万円以下であることが必要となります。これにより父母等(直系尊属)から住宅取得等資金の贈与を受ける場合の非課税枠は以下のとおりです。

2―直近の改正点
1 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成21年10月1日施行)★★★

 平成22年度宅建試験から,特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(以下,「履行確保法」という)が,宅建業法およびその関係法令として出題の対象になると,試験実施機関(財団法人不動産適正取引推進機構)より発表されました。

 具体的にどのように出題されるのか,何問出題されるのかについては分かりませんが,宅建業法20問の枠内で出題されることは間違いなく,出題方法としては,①単独出題,②宅建業法の自ら売主制限に関連して問題の肢問として出題,の2つが考えられます。
 

本稿では,履行確保法の規定のうち,主に宅建業者の新築住宅に関する瑕疵担保責任の資力確保措置(住宅販売瑕疵担保保証金の供託および住宅瑕疵担保責任保険への加入)の基本的な骨格と宅建業法との関連に絞って解説していきます。

1―はじめに
 平成22年度(22年4月1日以降)の土地・建物にかかわる税制改正では,父母等の資金提供による若年者の住宅取得を促進するための贈与税の特例が拡充され,平成22年中の贈与は1,500万円まで非課税限度額が拡充されていることが目玉です。

 一方で従来からの居住用財産の買換えの特例や小規模宅地の課税の特例については,適用に制約が加わりました。ほかに従来からの良好な住宅の流通や各種改修を促進する税制の特例は,適用期限の延長により維持されています。以下,創設,内容改定,期限の延長別の概略です。

⑴ 創設され,あるいは今回拡充された特例
 父母等(直系尊属)から住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額を22年中1,500万円,23年は1,000万円とする特例

⑵ 内容が改定された特例
 小規模宅地等の相続税の課税価格計算の減額の特例について,継続して居住や事業を行わない場合の50%減額特例の廃止

⑶ 内容改定のうえ適用期限が延長された特例
 特定居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例について,譲渡対価2億円以下とする制約を加えたうえ,適用期限を平成23年12月31日まで延長

1―改正法対策の重要性
 今回の改正法対策では,平成22年に新しく試験範囲になった直近の改正点の重要項目(税法関係は除く)を扱います。

 最近の宅建試験では,近時の改正点が必ず出題されるようになり,改正法対策は受験者にとって必須になっています。

 改正点の出題も,その年に新たに試験範囲になった①直近の改正点だけでなく,改正施行から相当経過していても,まだ出題されていなかった②過去の改正点(隠れ改正点)※からも出題されるようになりました。

この2種類の改正点の出題は,年度によっては全50問中10問(1問4肢中の肢問としての部分出題も含む)と,その年の合格基準点の30%前後(10問前後)になることがあります。この意味で改正点は無視できなくなっています。

 


(3) 宅建業法
 宅建業法は,一般消費者の保護や取引の公正を図るための法律です。この分野は平成21年に20問(全出題の40%)に増加しているので,合否を左右するといっても過言ではありません。

目標得点   全20問中16問;

出題構成(代表的な出題例)
     免許(2問),取引主任者(3問),媒介契約(1問),広告規制(1問),事務所・案内所等の規制   (1問~2問),業務上の規制(1問~2問),35条の重要事項説明と37条書面(2問),報酬規制(1問),営業保証金と保証協会(2問),自ら売主の制限(3問),監督処分・罰則(1問)

 

(4) 税法その他
 平成21年に税法(苦手意識をもつ受験者が多い)は3問から2問に減少したため,その分だけこの分野全体として若干得点しやすくなっています。

 

目標得点  全8問中6問
出題構成
   :【税法※・鑑定評価】所得税・贈与税,不動産取得税または固定資産税,印紙税または登録免許税(これらの中から2問が出題),地価公示法または不動産鑑定評価基準1問(計3問)
【その他】住宅金融支援機構法1問,不当景品類及び不当表示防止法1問,宅地建物の統計1問,土地1問,建物1問(計5問)

※税法 各税法とも,課税システム(課税主体,課税客体,税率,免税点,課税方法)と特例を押さえておけば十分得点できます。

 

4 分野別の落ちないための目標得点と出題構成

 ここでは,分野別に,目標得点と出題構成を確認しておきましょう。
 なお,各分野の目標得点を合計すると38点になっていますが,それぞれ保険をかけた目標点数です。

 試験はもともと水物ですから,ギリギリ合格を狙っても試験当日何があるか分かりません。結果的に目標得点を下回る分野が出てくることも考えられます。そのような場合でも,何とか合格基準だけはクリアできるようにするには,各分野ごとに目標得点を設定しておく必要があります。

(1) 権利関係
 この分野は,不動産の取引(売買,貸借)を行ううえで知っておくべき契約と権利についての法律を扱います。
 具体的には,民法,民法の賃貸借の特則である借地借家法,民法の共有の特則である区分所有法,権利の変動に伴う登記手続を扱う不動産登記法(いわば民法の整備法)です。

 この分野は,覚えようとするよりも制度趣旨をよく理解することが近道です。基本書を読み込んだだけでは得点するのは他の分野に比べて難しいので,粘り強くたっぷり時間をかけて攻略しましょう。

目標得点  全14問中10問
出題構    民法(判例からの出題が多い)10問,借地借家法2問(借地権1問,借家権1問),区   分所有法(1問),不動産登記法(1問)

 

 

 

3 50問実戦演習期(9月)
 これまでの問題演習では,どの単元の問題なのかあらかじめ知っていたうえで,時間無制限で問題を解いていました。

しかし,試験本番では,1問の所要時間は最大で2分24秒,問題の出題項目はランダムということで,試験本番どおりに50問を2時間で解いてみると意外に得点できないことに気がつきます。50問を解くのと過去問集で問題を解くのとではまったく異質な面があるのです。

 そのため,「年度別の過去問を50問通して解く作業」と「模擬試験問題を解く作業」の2段階をこの期間にしておく必要があります。

 50問を解く最大のご利益は,時間配分,問題を解く順番,見直しの方法をリハーサルすることができ,試験本番で実力を答案に反映させること(うまくすれば,実力以上の得点を取ることができる)にあります。このリハーサル抜きで試験本番を迎えれば,実力の半分も発揮することはできません。

 また,試験本番では,これまで出題されなかったものが必ず出題されます。具体的には,改正点(当然ながら過去問はない)や既知の知識でも視点を変えた問題,まったく初出題の問題です。こういったもので試験時間中に頭がショートしてしまうと思うように得点できません。

 模擬試験は,「改正点ではどのような点に注意すればよいか」,また「過去問に出題のないものでも出題可能性のあるものは何か(実際は,過去問で既出の学習項目に関連するものが多い。

また,既知でよく知られた知識でも,視点や切り口を変えると,一転してとたんに難しい問題になってしまう場合がある)」も提示してくれるので,免疫効果をつけるためにも,模擬試験(直前予想問題集や指導機関で実施する模擬試験)は必ず受けておきたいものです。

2 4肢択一演習期(8月)
 この期間には,項目ごとに,過去問を解くことを反復し,漏れのないように知識を定着させるとともに,4つの選択肢の中から正解肢を確実に選べるようにするのが課題です。この期間には,以下のことに注意すべきです。

1)知識が虫食い状態で断片化されていることが多いため,知識の横断的な整理(全体的な関連,つながりを把握)をしておく。

2)法改正のチェックは必須で,宅建試験では改正前との対比問題がよく出題される。そのため,改正後のことしか知らないと正解できないことがある。

3)基本書で学んだ知識はすぐチェックする
 基本書で学んだ知識が過去問でどのように出題されているのか,変形バージョンがどのくらいあるのか把握しなければ,知識の保持も,また理解の深化もできません。

 問題演習には,一問一答での知識習得チェックと4肢択一の問題演習の2段階にすると効果的です。4肢択一の問題演習のみではどこが理解できていないのか分からない場合があるからです。

 4肢択一の項目別の過去問集を学習するときには,なぜその肢が誤りなのか,肢ごとにその理由をいえるようにするのがよいといわれていますが,4肢択一の過去問では小問集合のように各肢とも出題項目がバラバラの場合があったり,各肢の構成や問題設定によっても理解困難な場合があります。

【一問一答】楽学宅建1000本ノック,パーフェクト宅建一問一答;【項目別の4肢択一の過去問集】楽学宅建過去問ドリル,楽学宅建3か月合格塾,パーフェクト宅建分野別過去問題集,ピタうかり宅建過去問トレーニング(権利関係,法令上の制限・税・その他,宅建業法の3分冊)

 

1)基本書を読む
 この期間の基本書には,出題頻度が高く,優先的に学習すべきものをテンポよくスピーディーに,集約的に提示し,無理なくスムーズに学習させてくれるものとして,『氷見敏明の楽学宅建』(住宅新報社※)が最適です。

ところどころに,類似の制度との誤解を防止するテクニックや代表的な出題方法について,かゆい所に手が届くように解説されています。

※一番ラインナップが豊富(出版点数が最多)で充実しているのは住宅新報社です。本稿では,住宅新報社刊行の学習書籍等を紹介しています。

【基本書】パーフェクト宅建,氷見敏明の楽学宅建,わかる基本書,ピタうかり宅建

 

3 合格スケジュール
 これから試験本番までの約7カ月を以下のように4つの期間に分けて学習するのが合理的です。各期とも,学習環境・学習履歴に応じて調整してください。

1  知識の定着学習期:3月~7月
2  4肢択一演習期:8月
3  50問実戦演習期:9月
4  直前の総括期:10月(実質的には2週間)

1 知識の定着学習期――少なくとも7月までに1回転させる
 この定着学習期には,知識のコアとなるものを徹底的にマスターし,基礎的な用語や概念については正確に把握して絶対に間違えないようにすることが目標です。
 

(4) 過去問学習は本番の試験で得点力を上げるため
 宅建試験の勉強では,基本書を読む時間よりも過去問を解く時間のほうを多めに取らなければいけません(基本書を読む時間数を3とすれば,過去問を解く時間数を7にする)。

 よく基本書を読んだだけで学習したつもりになっている方がいますが,それでは試験本番で問題が解けません。

 学習心理学では,短期記憶(最近,新しく学んだ知識)は活用する回数(使用頻度)が増えるに従って長期記憶になって定着していくといわれます。つまり,その知識を使って過去問をどのくらい解いたかによって,問題が解けるようになるのです。

 試験対策で重要なのは,「基本書が分かる」ことではなく,「問題を着実に解ける」ようになることなのです。過去問学習を繰り返す最終目標は,試験本番で問題を解ける確率を高めることだといっても過言ではありません。

2 学習するのは試験問題を解くため

(1)  誤解されることを恐れずに申し上げれば,勉強するのは最終的に試験に合格するためです。そのためには過去問をよく知る必要があります。なぜかというと,どの資格試験でも,その試験独特の出題方法があるからです。早くそれに慣れて,何が出題されるか予想できるくらいになれば,見通しよく勉強できます。

(2) 学術的な専門知識を習得するのが目標ではない
 宅建試験では,不動産に係る法令が実務面を中心に出題されています。そのため学習するのに必要なのは,各法令について,学習の核(コア)となるものを手早く身につけて,それが過去問でどのように出題されているかを整理し,類似の問題が出題されたときに解けるようにしておくことです。

学習のコアを習得する
    ↓
過去問での出題方法を知る

 どの出題項目でも,宅建試験で出題される限界があるので,その範囲内を徹底して学習すれば,誰でも合格点を取れるようになるのです。

(4) 合格率と合格基準――目標得点
 全体の合格率は,16%~17%です。ただし,この5年間でみると,一般の受験者では15%前後で大きな変動がない(変動幅は1.1%)のに対し,登録講習※修了者では年度により合格率の変動幅は大きくなっています(変動幅は6.4%)。

※宅建業に従事する者が受講できる。登録講習修了者は,問46-50の5問が免除され,一般の受験者とは別に合否が判定される(昨年までの合格基準点は一般よりも5点低い)。

宅建試験の合格者のうち登録講習修了者の占める割合は,平成17年度から平成21年度では,17.6%→21.2%→26.3%→25.6%→27.9%と推移している(合格者の4人に1人が登録講習修了者)。

●合格基準と合格率の推移

                                                               合 格 率    
                  合格基準※              一般の受験者      登録講習修了者
17年度         33点 (28点)        15.9%            29.0%             
18年度         34点(29点)         15.8%            25.4%
19年度         35点(30点)         15.2%            27.9%
20年度         33点(28点)         14.8%            22.6%
21年度         33点(28点)         15.9%            26.6%

※( )内は,登録講習修了者の合格基準       

 

(2) 試験の実施日程
 以下は,例年の実施日程です。
●実施公告:6月上旬
官報,都道府県の公報,試験実施機関などのホームページで掲載される。;
●試験案内配布:7月上旬~下旬
都道府県庁,出先機関,指定書籍店などで配布
●受験申込受付:【郵送】7月上旬~下旬
【インターネット】7月上旬から約2週間
●;試験日:10月第3日曜日
(平成22年は10月17日)
●合格発表:11月下旬~12月上旬
(例年どおりなら,12月1日)

(3) 出題内容と出題形式
 平成21年度に出題科目数の変更があり,下表のように出題されました。22年度も同様と思われます。

宅建試験とは

(1) 試験の概要
 宅地建物取引主任者試験(以下「宅建試験」)は,20万人以上が受験するマンモス資格試験です。これだけ人気があるのはなぜかというと,誰でも受けられるからです(年齢,学歴等の受験資格制限がない)。

 このため,宅地建物取引主任者の設置義務がある業種――不動産開発・分譲・流通関係や信託関係,いわゆる宅建業の方々〈就職・転職目的,新規事業立ち上げの準備目的の方も含む〉だけでなく,不動産やその取引について仕事のうえで知っておく必要がある方々(保有する不動産の管理部門に所属している方々〈個人の大家・地主も含む〉,不動産関連部署の公務員の方々,自己啓発目的の方々など)も受験しています。

 また,不動産や法律の資格試験(不動産鑑定士,土地家屋調査士,司法書士,行政書士など)の入門編として受験する方々や不動産管理業のマンション管理士,管理業務主任者試験の受験者の方々もいます。

 このように,現在では,さまざまな方々が宅建試験を受験しています。

3:宅建試験対策の根本事項
(1)確実に36点以上を取る
 宅建業法20問時代が始まり,合格基準点が今後どうなるのか注目されています。これまでの合格基準点の最高は36点(平成14年度)でしたが,従来苦手意識の強かった権利関係・税法が減少し,比較的難易度の低い宅建業法が増加していることから,将来は合格基準点が36点を超えることになるかもしれません。

 しかし,当面はやはり36点を確実に取れるようにすることが先決です。宅建業法20問元年の今年も出題内容に大きな変化がなかった以上,今後も「基本的な事項(特に出題頻度の高い問題)は確実に取れるようにすること」「苦手意識をもつ項目を最小限にすること」が必要です。

そのためには,学習時間を十分取れるように計画を立ててください(宅建試験では時間切れで学習が不十分だったという受験者の方が他の資格試験に比べて多いといわれています)。

(2)過去問は90%以上の正解を目標に
 過去問は9割以上できるようにしておくのが絶対条件です。どんな資格試験でも合格するためには過去問をマスターすることが必要だといわれています。基本書で学んだ知識の中で,何がどのように出題されているのか知らなければ,得点力は半減します。

 効率的な過去問の学習方法としては,学習項目ごとに,基本書で基礎知識をインプット⇒知識が身についているか過去問(一問一答または項目別問題集)でチェックすることです。 

(5)改正法からの出題
 改正点が少なかったためか,平成21年に初めて出題範囲となった改正点の出題は下記の1問だけでした。しかし,過去の改正点で出題のものが前年に続き,出題されています(下表参照)。

 平成22年も,新たに出題範囲となる改正点は比較的少ないので,やはり過去の改正点でまだ出題されていないものにも留意しておく必要があるでしょう。過去問出題歴がないということは当然,過去問題集にも掲載がなく,基本書でも説明が簡略になっているか,記述そのものがないということがあるからです。重点的に対策を練る必要があります。

1 平成21年に初めて出題範囲となった改正点 
宅建業法  問33肢1  35条の重要事項(歴史的風致形成建造物)

2 過去の改正点の出題
●民法       抵当権消滅請求 問6

●法令上の制限     建築基準法 問18 準都市計画区域,構造計算適 合性判定,指定確認検査機関

●宅建業法    重要事項説明 問33・肢2 媒介業者に石綿の調 査義務はない。


 22年度試験の対策としては,本誌の国家試験改正法講座などを活用するとともに,過去の改正点についても不安のないようにしておきたいものです。
 平成22年に初めて試験範囲となる改正点は,税法を除けば,毎年のように大量の改正点があった2,3年前までと比べれば少ないので,落ち着いて学習できるはずです。

それでは,今年の出題内容の特徴を各分野別にみていきます。
1 権利関係
●正解肢の出題歴と難易度
 正解肢に出題歴(関連出題を含む)があるものは14問中12問(20年度は16問中12問)で,初出題は2問でした。

 しかし,過去問に出題歴があり,さほど難度の高いものではなくても,頻出問題とはいえないため,全体的に例年並みであっても(正解肢以外の選択肢も大半に過去問出題がある。初出題は少ない),受験者によっては難しく感じたかもしれません。実際,問3(賃料債権の消滅時効),問6(抵当権消滅請求),問9(負担付き贈与,実質的に初出題),問13(公正証書による規約)は自己採点集計での正答率が極端に低いもの(30%前後)になっています。

○5年以内に出題歴(4問):
    問1(錯誤・動機の表示13-2-3*),問5(物上代位17-5-1,3),問8(解除前の第三者の権利保護要件16-9-1),問12(期間の定めのない建物賃貸借・使用貸借17-10-4,8-12)

;○6年前~10年前に出題歴(3問):
    問4(公道に至るための通行権13-3-1),問7(法定地上権14-6-2),問13(公正証書による規約13-15-1*)

○10年超前に出題歴(5問)
   :問2(未成年の代理人4-2-1),問3(催告と消滅時効の中断,元-2-2*),問9(負担付き贈与と瑕疵担保責任10-9-3*),問10(代金支払拒否権2-6-2),問11(法定更新の存続期間,昭61-13-3)
○初出題(2問)
  問6(抵当権消滅請求の手続),問14(表題部所有者の変更登記の申請

(凡例)16-9-1は,類題が平成16年問9肢1で出題,昭61-13-3は昭和61年に出題されたこと,*印は関連出題があったことを示します。