1.試験勉強の考え方
宅建試験の合格スケジュールを考える前に,まず,試験に合格するための学習法について,話しておきたいと思います。どのような勉強の仕方をすればよいかという方法論です。
(1)問題を解くための勉強
考え方の出発点として非常に重要なのですが,これから皆さんが始める勉強は,あくまで宅建試験に合格するために行うのだということを忘れないでください。
学者になって学問を究めたり,弁護士レベルの法律知識を獲得するために勉強するわけではありません。宅建試験に合格するためには,宅建試験に出題された問題を一定以上の確率で正解できるようになればいいのです。
学問的な基礎をしっかり身につけて,難しい応用問題にも対応できるような実力をつけようなどと意気込んで勉強すると,かえって,合格が遠のくおそれがあります。
たとえば,宅建試験に出題される主要な法律の1つである民法について,有名な大学教授が書いた分厚い専門書を最初からていねいに読んでいったので は,マスターするために膨大な時間がかかりますし,それなりに勉強したつもりでも,なかなか得点には結びつかないことが多いと思います。
どんなに学問的にすばらしい本を読んだとしても,試験問題を見据えた勉強をしていないと,出題されそうもない論点に深入りしたり,逆に出題されやすい部分をさっと素通りしてしまうからです。
とにかく,試験勉強とは,問題を解けるようになるための勉強であるということを常に意識しておいてください。
(2)試験に受かるための基礎学力
試験で求められているものを見据えて,要領よく勉強することが合格への近道ですが,誤解しないでほしいことがあります。それは,要領よく勉強するといっても,基礎を軽視して,試験に出るところだけをつまみ食い的に暗記することを意味するわけではないということです。
本試験では,過去に出題された問題(過去問)と類似した問題がしばしば出題されますが,過去問とまったく同じ形で出題されるわけではありません。少し角度を変えたり,一定の応用力を求めたかたちで出題されます。
つまみ食い的な暗記勉強だけでは,そうした問題には対応し切れません。やはり知識の丸暗記だけではダメで,ある程度基礎的な学力を身にあつけることも必要なのです。
ただ,難しいのは,一体どこまでが基礎なのかという見極めです。初学者のうちは,基礎のポイントがずれてしまい,求められているものから離れてしまう危険があります。
実は,何が基礎かということは,全体を理解してはじめて分かることです。基礎の習得も,後で述べる学習法を通じて身につけるのが合理的です。差し当たっては,頻繁に出てくる専門用語の意味を理解することだけを心がければよいでしょう。
たとえば,法律用語なら,「善意」「悪意」「無効」「取消し」などです。用語の意味が分からないと,問題を見て,求められているものを知ることさえできないからです。
そして,勉強していると,繰り返し出てくる考え方や用語に出くわすはずです。また,出てくる場面は違っていても,非常によく似た理屈がいろいろなところで使われていることがあります。そういう部分が,試験で求められている基礎なのです。
何度も出てきたし,もう分かっているからと思わずに,その都度もう一度その考え方の根本にさかのぼって内容を確認すれば,自然に基礎が身についていきます。
2.合理的な学習法
以上を踏まえて,私の考える合理的な学習法を紹介しましょう。まず,全体の流れを示しておきます。
①過去問を少し解いてみる ②テキストの速読 ③過去問を解く ④テキストの再読 ⑤過去問を再度解く ⑥弱点の洗い出し ⑦弱点克服および総復習
上記のような手順で学習を進めていくのですが,その内容について以下に補足説明をしていきます。
(1)過去問を少し解いてみる
受験を決意したら,まず本試験の過去問題集を入手してください。そして,いきなり問題を解いてみてください。
もちろん,まったく勉強していないのですから,さっぱり解けないでしょう。それでもいいから,主要な科目について2~3問ずつ解いてみてください。
最終目標は,これらの問題を解けるようになればよいのです。目指すべき山の頂上のイメージがおぼろげながら見えたはずです。ここではイメージさえつかめれば,十分です。
(2)テキストの速読
次にやるべきことは,テキストの速読です。よく理解できないところがあっても,どんどん先に進んでください。どの項目に大体どんなことが書いてあったかが分かれば十分です。
ここでの目的は,①全体像をつかみ雰囲気に慣れること,②基本用語の理解,③後で過去問を解くときにテキストのどこを見ればよいかを知ることです。
(3)過去問を解く
テキストを速読したら,直ちに過去問を解きます。この場合,テキスト全部を速読して,全過去問を解くという方法よりは,科目ごとに行ったほうがよいでしょう。
まだテキストの速読しかしていないので,頭の中の知識だけでは過去問をきちんと解けないと思います。それでかまいません。
この段階で過去問を解くのが,私の学習法のメーンの部分です。実は,過去問を解くというよりは,過去問を見て,答えを出すために必要な知識を入手することが目的です。ですから,テキストを見ながら問題を解いてください。
問題の答えを出すために,テキストの必要部分をじっくりと読むのです。
この際に気をつけてほしいのは,単純な結論部分だけではなく,結論に至る説明の部分もきちんと読むことです。結論を暗記することが主目的ではありません。
どういう理屈や考え方でそういう結論になるのかという点を理解することのほうが重要です。前述のとおり,過去問と100パーセント同じ問題が出るわけではありません。少し角度を変えても答えられる実力を試験は求めているからです。
過去問を解くためにテキストを精読していけば,自然に問題が求めている部分を中心に勉強することになります。ほとんど出題されない細かい論点に深入りする心配もなく,要領よく重要ポイントを押さえることができます。
なお,テキストを読む際,過去問の答えを出すために必要な部分には,アンダーラインを引くなどの作業をしておくとよいでしょう。
(4)テキストの再読
過去問を解くことを通じて,試験が求めるものが見えてきたはずです。どこまで覚えて,どこまで理解しておかないと,試験で合格できないかというイメージが,よりハッキリしてきたはずです。
こうしたイメージがしっかりできあがれば,もはや合格は時間の問題です。そのイメージに近づけるため,必要な努力をするだけです。
どんな人でも覚えた知識を忘れてしまうことがあります。忘れないようにするためには,繰り返し覚えるしかありません。過去問を通じたテキストの精読だけでは,まだ全部覚えることは無理です。もう一度テキストに目を通して,記憶を反復してください。
過去問を解くためにテキストを精読したときに,アンダーラインを引いてあるので,その部分は特に念入りに理解し,覚えるようにしましょう。訳も分からず読んだ最初の速読のときと違って,今度はしっかりメリハリをつけて読むことができます。
(5)過去問を再度解く
この段階では,かなり実力がついてきているはずです。いよいよ実力を実戦的に検証する時期です。
そこで,もう一度,今度はテキストを見ずに過去問を解いてみましょう。答えに自信がない部分や,間違えた部分が自分の弱点です。その弱点の部分は,再度テキストに戻って理解を確実にしましょう。
(6)弱点の洗い出し
これは,本試験が近づいてきた時期に,最後の総仕上げを行う準備となるイベントです。具体的には,前年の本試験問題を本試験と同じく2時間で解いてみるのです。その得点結果を分析して,自分の客観的な実力や弱点を調べます。
仮に,前年の本試験の合格点は33点だけど,実際に解いてみると30点しか得点できなかったという場合,どうやって,あと3点以上の得点力アップを図るかという戦略を考えます。
たとえば,権利関係は約7割正解,宅建業法は約8割正解であったのに対し,法令上の制限は正解率5割に達していなかったという場合,権利関係と宅建業法でさらに得点を伸ばすことは難しいけれど,法令上の制限はまだ上昇の余地があります。
そこで,本試験までの残りの期間は,主に法令上の制限に学習時間を割いて,得点アップを図るのです。
(7)弱点克服および総復習
本試験の直前期における最終的な学習です。上記の弱点の洗い出しによって明らかになった部分を克服するとともに,暗記すべき数字等の確認や繰り返して間違えた過去問の見直しなどを行い,本試験に備えます。

