風のたより
風のたより
風がなんとなく春めいてきて,街にはマスクをしている人が目立ってきた。
友人は,2月の終わりころから怯えていた。
昨年の夏が猛暑だったから,今年は絶対に多いと。さらに,2月まで寒い日が続いたので,5月ころまで舞うらしい。
スギ花粉の飛散状況は,テレビの天気予報のなかでも報じられている。
最近では花粉対策グッズも充実しているようだが,友人の話によると,一番困るのが外に洗濯物,布団を干せないことらしい。
マスクとゴーグルにしか見えないサングラスをかけた友人(実に怪しい)が気の毒になる。編集長おすすめの鼻うがいをしているわけではないが,私は今のところまだ大丈夫。(冨士田)
人はウツになったり,ひどいと狂気じみてきたりするが,少しも不思議なことではない,とぼくは思う。
人は生まれるときに母の産道をくぐる。このときたぶん「死ぬ苦しみ」を赤ん坊は味わっている。
実際に,死にはしなくても発狂寸前まで追い詰められている場合が多いのではないだろうか。
安定した母胎を離れたことが人の最大の不幸である。
生まれた後は,ひたすらに母胎を恋しがる。幼いときは母を求め,大人になっては異性を求める。
しかし,これは擬似的に母胎へ向かうだけで,本格的に回帰することはできない。
死だけが母胎に帰る唯一の道である,とぼくは思う。だから自死への願望が抜き難く人に存在するのだ。
生きている間は,母胎にいたときに比べて,人の心身は不安定である。
これだけは誰も変わらない。だからどんなに幸せそうに見える人でも,不安定な心理状態におかれている,とぼくは想像している。
体が風邪をひくように環境が厳しくなれば,心もウツ状態になってしまう。
風邪を予防するように,心もウツにならないように予防することはできるだろうか。ぼくは可能だと思う。前月号の風のたよりでも述べたが,過去を思い起こすことが予防になる。
自分にとっての遠い過去である幼い日々のことを,毎日ほんの一瞬でいいから,思い出してメモしておく。そしてすぐに日々の暮らしにもどる。
これを毎日繰り返すと,ある日あるときに,心の視界が広がる体験がやってくる。
自分の性格がどうして形成されたかが,自分で納得できるようになるのである。自分を硬く縛っていた糸が切れて心身が柔らかくなるのがわかる。これを繰り返すことが「心のうがい」になり,暮らしに息をつく余裕も育んでくれる。(殿岡)
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